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あぱかば・ブログ篇

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2015年 05月 07日

さめない夢の世界へ——「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」

この2年、ウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」代表の猪子さんにぞっこんだ。
初めて会った日から一目惚れ。
チームラボと猪子さんには、ずっとドキドキさせられっぱなし。

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『秩序がなくともピースは成り立つ』
私はここに30分いました。
それほど気持ちいい。
鑑賞者の動きに反応した人間や動物(ウサギやカエル)がこちらに合図を送ったり、踊りをやめてこちらを見たりする

2013年12月、チームラボがシンガポールビエンナーレに『秩序がなくともピースは成り立つ』を出展していると知り、シンガポールへ行ってみた。
すると会場に、たまたま猪子さんがいたのだ。
チェックのシャツの普段着で、関係者と談笑しているのを遠くから見ただけでも、“乗りにノッてる男”の輝きがすごかった。
勇気を出して少しだけお話をしたが、壁というものがまるっきりなくて、気さくでフラット。
凡人とは別次元のところにいる真の天才とは、こんな人が多い。
その太陽のような明るさとシャベリのアホの子っぽさ(すみません。天才なんですよ)に完全に参ってしまった。

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この滝の水の落ちる速度は、ほんものの水よりも少し遅くしているという。
それにより、ほんものの水よりもさらにリアリティーを獲得する。
目への訴求。

(シンガポールビエンナーレの記事をエイビーロードに書き、猪子さんとの出会いも書いたのでぜひどうぞ!
作品の簡単な説明もあります。こちら→「シンガポールビエンナーレ2013」報告!(その2)

2014年3月、佐賀で開催された、チームラボ国内初の大規模な展覧会「チームラボと佐賀 巡る!巡り巡って巡る展」へ行った。
あまりに感動して、東京から2回行った。
なんと佐賀でも、猪子さんと会えてお話ができたのだった。
「シンガポールでお会いしました」と話しかけると、「ああーっ!あのときの!また東京から来てくれたの?嬉しいなあ!」と、会ったことを思い出してくれた。
2回続けてご本人とお会いできたから、今でも展覧会場に行くと猪子さんがいるような気がしてドキドキしてしまうのだろう。

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漢字が降りてくる。
漢字に触れるとその漢字のイメージの絵がふわっと現れてくる。
誰もなにもしないと、このとおり静かに漢字が降りては消えていくだけ。
日本科学未来館の展示では、たまたま、私がやってみせるまで、誰もその仕掛けをわかっていなかった。
文字が、意味を召喚する。
古代にはあったであろう「文字」というものに込められた力の原点へ、立ち返る

佐賀の「巡る展」は、旅先でtwitterに連ツイしたので載せておく。

佐賀の目的はこれだ。「チームラボと佐賀 巡る!巡り巡って巡る展」3週間前にも来た。あまりの感動で再訪。二度とも東京からだが、それだけの価値はある。この3週間、衝撃と感動の余韻がずっと体に残っていた。また来られてやっと落ち着いた感じ。

開催直後は空いていて貸し切り状態のこともあったが、昨日は大盛況。嬉しい。老夫婦のおじいさんが「こんなのを見てたら、全部吹っ飛んじゃうな。悩みとか、嫌なこと全部…」と言ってた。そう、チームラボは鑑賞じゃなくて体験。

作品に共通する強烈かつ高次元の日本への愛。天才の工学の人間が日本への愛を表すとこうなるのか。そこに言葉は介在する余地無し!言葉をすっ飛ばしてダイレクトに髄にくる感じ、だが手法はあくまでデジタル。それがカッコいい

チームラボを見ていると日本がとてつもなくカッコよく見えてくる。「日本」というコンテンツの読み解きの深さが凡百の「アート」とは段違いなのだ。まさしく天才集団。心の底から言い知れぬ気持ちが溢れ出し、涙があふれる。また、どこかで。

自と他、主体と客体の区別がつかなくなり、作品の中に入り込む感覚。それがパースペクティブの西洋絵画とまったく違う目でこの世界を感じて表現してきた日本人の見方。チームラボを見る前に猪子さんのインタビューや本を読むと感動もひとしお。

チームラボ猪子さんはイケメンと言われるがむしろ「面構えのいい男」。武士に会ったことないけど武士みたいな風貌。アホの子のようなシャベリに隠された強靭な知性と意志。デジタルで、網膜に映る残像、残り香、消えゆくものの気配、この世の名残り、日本的な美の全てを立ち上がらせる。天才集団来たる

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『ニルヴァーナ』
釈迦の入滅に集まった動物たち。
伊藤若冲から着想を得たこの作品は、佐賀ではモニター展示、東京ではプロジェクションマッピング。
プロジェクションマッピングは絵がややぼやけるが、より若冲らしさに近い。

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入滅の瞬間、うごめいていた動物たちが全員、こちらを向いて動きを止める。
やがて静かに去っていく。
釈迦のまぶたが閉じられるのを感じる。
自らが、死にゆく釈迦の視点になる。
日本科学未来館では、会期途中に展示を変えた。
この作品が『世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う』というタイトルとなり、アニメーションではなくなった。
始まりと終わりがなくなり、涅槃の物語は消えた。
代わりに、鑑賞者が壁に手を触れるとその影響を受けてさざ波のように画面が動く。
ニルヴァーナ(涅槃)も感動的だったが、さらにインタラクティブを追求したこの場に合ったものに進化


このときは、「東京凱旋はいつだろう」と、もうそれだけを待っていた。
2014年6月に、東京都現代美術館で開催された「ミッション[宇宙×芸術] -コスモロジーを超えて」に、2点出展していたが、もっともっとどっさり見たい。
そしたら日本科学未来館が大規模展覧会を、やってくれた!
3回行っちゃった。

今日、3回目に行ってきたが、展示が増えたり変わったりしていた。
やっぱり来てよかった。

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みんな大好き、『追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点』
板野サーカスへのオマージュ。
これは50回は見た。
あまりのかっこよさに涙があふれて止まらない


いくら見ていても、“飽きる”ということがない。
帰らなければいけない時間だから見るのをやめるだけで、本当はみんな、いつまでもずーっと見ていたいのだ。
会場のあちこちで、「ずっと見ていたいわ……」「家に持って帰りたい。家で見てたら30分くらいすぐ経っちゃうだろうな」「いや、ここから動きたくない……!」というつぶやきが漏れていた。

私も、同じ作品をそれぞれ何十回も見たが、それでもまたその作品に向き合うときがズキズキするほど待ちきれないのだ。
それくらい、チームラボの展示は多幸感にあふれている。
脳内の快楽物質がドクドク分泌されて、目をそらすことができない。
ある年上の友人が「あの映像の快楽は射精の感覚に似ている」と言ったが、その喩えはまさしく正鵠。
小理屈をすべて引っ剥がして、最後の最後に残った、人間が求める高次の快感だけを、隙なく繰り広げる。
「だって気持ちいいでしょこれ?」
作品の前に立ち尽くす人の頭に、猪子さんのあのシャベリが降ってくるようだ。

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会期途中で発表された新作。
蘭が人の動きを感知して上がったり下がったりする。
花の上下のスピードや距離を、どれだけ測っただろう。
人が快感を感じるタイミングにぴたりと合ったとき、上下の感覚が失せ、浮遊感が生まれる


とてつもない天才が現れたとき、テクノロジーもアートも、激烈な転換点を迎える。
今、チームラボの見せるアートは、まさにその歴史的な大転換の中心にいると感じる。
誰も天才・猪子と天才・チームラボの仕掛ける未来についてこられない。
ついてこられるのは、天才か、子供だ。
未来の遊園地ゾーンで遊ぶ子供たちの輝く無心な顔を見よ。

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小理屈をこねて斜に構える大人には、ここのおもしろさはわからない。

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好奇心を持った大人は遊べる。


デジタルは冷たい?
デジタルは芸術とはいえない?
“複製技術時代の芸術(ベンヤミン)”を先鋭化させた鬼っ子?
いや、それは前時代へのノスタルジーだ。
デジタルでしか成しえなかった、新しいアートを見てほしい。
デジタルは双方向。
あたたかさに満ちた概念。
人を分断するのではなく、人を楽々とつなげる。
「日本」の「科学」の「未来」をおさめた日本科学未来館での展覧会開催は、まさしく未来を見せてくれるチームラボにふさわしい会場だ。

このレビューを読んで、週末に日本科学未来館へ行こうと思った皆さん。
作品を見る前に、かならず、解説を読んでほしい。
解説を読むことで、彼らがどれほど深くアートを、テクノロジーを、未来を信じているか、日本を、アートを、人間を愛しているかを、理解できる。
ともに、幸せを体験しましょう!

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新作の部屋で夢を見ている人々。
目覚めてもさめない夢があるとすれば、それはチームラボだ。



by apakaba | 2015-05-07 23:02 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(0)


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