あぱかば・ブログ篇

apakaba.exblog.jp
ブログトップ
2015年 11月 06日

『早川千晶と大西マサヤのケニアン・ナイト!』 ――ケニアのスラムで子ども600人育ててます!/伝統太鼓「ンゴマ」で弾けろー♪

c0042704_17030753.jpg
森優子さん手書きのメニュー。
ミスをぐちゃぐちゃと線で消してしまうところは私とそっくりよ


旅行雑誌『旅行人(現在休刊)』を唯一の心の糧として生きていた90年代、当時の執筆陣のお名前は、忘れようにも忘れられない。
あのころ連載を持っていた方々は、珠玉の書き手ぞろいだった。
ケニアで暮らす早川千晶さんの連載ページは、アフリカの湿気のないカラッとした風が吹いてくるようだった。
行ったことのないケニアの風景や人々の描写は、住んでいるからこその、あふれる情愛と醒めた視線が交互に現れる名文だった。


20年あこがれた早川さんが、なんと阿佐ヶ谷(ナイロビに較べて、ち、近い!)でトークをしてくれるとは!
それも司会は、こちらも私が90年代からの大ファン、森優子さんと、このかたも超名文家の片岡恭子さんだ(皆さんのプロフィールは上のリンクを見てね)。
しかも大西マサヤさんというケニアの伝統太鼓「ンゴマ」奏者による生演奏も!
さ、最高すぎる。

c0042704_17391254.jpg
これが限定メニュー。
「スクマウィキ」とは「一週間をのりきろう!」という意味なんだって


早川さんがステージに現れた瞬間に、そのお顔に見とれた。
誰もがいっぺんで好きになる笑顔!
顔の、隅から隅まで、どこにも「翳り」「憂い」ががない!
青空のような、太陽のような、平凡きわまりないけどそういうど真ん中のたとえが似合う人!
笑っていても、どこかに敵意や悪意を感じる表情。
どこかで相手を探っているような表情。
そんな笑顔をする大人は多い。
それなのに、私のひとつ年上だという早川さんは、なんて、なんて、なんて明るい顔なんだろうか。

c0042704_18224142.jpg

しかし、その笑顔が底抜けに明るいのは、早川さんがたんに明るい人だからという単純な話ではない。

早川さんは、ナイロビにあるケニア最大のスラム「キベラスラム」で、子供に教育を受けさせるための寺子屋をつくり、現在は600人の子供がその学校「マゴソ・スクール」に通うまでになっている。
ケニアという貧富の差が激しすぎる国では、本来なら国の宝であるはずの子供と若者が教育を受ける機会を奪われ、それどころか生活の基盤すら奪われてしまっている。
キベラスラムには、国内外からやってきた100万人の人が暮らしていて、その半分は子供、20代の若者を含めると、住民のうち実に80パーセントを、子供と若者が占めるのだ。
ケニアにとって、アフリカにとってなんという損失。
飢えと寒さを忘れるために、手に入れたわずかな現金でシンナーを買い、心身を壊していく少年や、たった17歳で早川さんに向かってピストル強盗を働こうとした少年(その少年は裁判なども受けずに銃殺される)。
トークでは語られなかった、さらにつらく苦しい体験が、まだまだ山のようにあるにちがいない。

つらく苦しいことと、幸せで楽しいことがたくさんあって、それであの太陽のような笑顔になっていったのだな。

c0042704_18242220.jpg
大西マサヤさんの太鼓「ンゴマ」は、やっぱり明るかった。
初めてケニアの太鼓を聴いたが、もっとポコポコとつかえる感じの音を予想していたら、音がポーンと空に抜けるように響き渡り、それがケニアのお話にぴったり似合っていた。
スワヒリ語でくりかえし「ハランベ」「ハランベ」と歌われていて、その言葉は甘く懐かしかった。
ああ、『旅行人』の連載の中で、よく見た言葉だ……。

人はどこが「彼の地」となるのか、そこを彼の地と決めるのか。
若い頃、世界をまわった早川さんにとって、彼の地はケニアだった。
私の友人にも、日本国内や世界のいろいろな場所を自らの旅の終焉の地と決めて、暮らし始める人が何人もいる。
なぜ「ここだ」とわかるんだろう。

でも私にとっては、きっとここ、今いる場所だと思える。

自分とほぼ同い年の早川さんと自分が過ごした、この20年の年月を考えていた。
もっと別の生き方もあった……と、思うときがある。
とくにここ何年か、その思いが強かった。
けれども、ケニア最大のスラムで子供の教育を考えて行動している早川さんと、スケールはぜんぜんちがうけれど、私や私の友人も、皆、子供の教育の大切さを知っていて、自分に与えられた場で子供に関わろうとしているのは、同じだ(「4年たって、決意が固まってきた」へ)。




そんなことを考えていたら、マゴソ・スクールの子供達が、スラムで歌う映像が流れた。
「みんな問題を抱えている、子供たちはみんな困ってる」という歌詞に続き、「マリの子供たちも」「タンザニアの子供たちも」「ウガンダの子供たちも」などアフリカ諸国の名前が挙がり、そこにひょこっと「日本の子供たちもきっと困ってる」と出てくるのだ。

とてつもなく大きなことをしている人を前にすると、たいてい、「それに較べて私なんか、なんにもしてこなかった」というむなしい気持ちになることがある。
ところが早川さんを見ていると、1歳しかちがわない同性がこれほどスケールの大きなことをしているのに、そんなむなしさや、敗北感や嫉妬心など微塵も湧いてこないのだ。
その逆に、「私も、私の場所で、しっかり幸せに生きるよ! 今、自分がやっていることは、まちがってないんだ。」という、大きな“自己肯定感”に包まれるのである。
見ず知らずの他人にこんな感覚を抱くことはめったにない。
それほど、早川さんの笑顔は大きく明るい。

本当にすばらしい旅人の夜だった。
このトークを開催してくれた森優子さん、片岡恭子さん、ありがとうございました!


by apakaba | 2015-11-06 21:35 | 旅行の話 | Comments(2)
Commented by SWALA at 2015-11-07 00:15 x
素敵な文章を読ませて頂きました 早川さんの笑顔は本当に明るく楽しいですよね。早川さんは真の意味で「美しい」人なんだと思います。私もあの笑顔に癒され、影響を受けた一人です。
Commented by apakaba at 2015-11-08 11:22
SWALAさん、コメントありがとうございます!
あれから数日たっても、まだ心身に余韻が残っています。
ほんとにすばらしいイベントでした。
自分がしていること、自分の生き方に自信がなくなりそうなとき、早川さんを思い出すと強く生きられそうです!
また、どこかで!


<< 歌舞伎座吉例顔見世大歌舞伎、夜...      「ササニシキ」の誕生日パーティー >>