2005年 10月 16日
日本橋三越で開催されている、『向栄会 茶道工芸展』へ行ってきた(会期は明日17日まで)。 向栄会というのは、小堀遠州を創始者とする遠州流茶道の会らしい。 夫が勤務する学校の授業で、最近、遠州流の茶道の稽古を生徒たちが習っているという。 家元がいらっしゃることもあるから、ひとつ展覧会でも行っておきたい、俺ひとりでは心細いから一緒に行こうと言われて、風邪だけどつきあった。 私は大学時代に、茶道研究会という大学のサークルに入っていて、裏千家の稽古に出ていた。 学生時代には、合宿で京都へ行ったとき、今日庵・不審庵(それぞれ裏・表千家の家元の茶亭)へ見学に行ったこともあるし、たびたび茶道具展へも出かけていた。 夫は生徒の授業の監督をするうちに、茶道に興味が出てきたばかりである。 流派がちがうので作法もかなりちがうけれど、まあ使う道具はいっしょだし、久しぶりに道具を見るか。 日本橋三越に入ったのはほとんど初めてかもしれない。 奇妙なスポットだ。 年齢層が、高い、とても高い。 同じ洋服のブランドでも、品揃えがあきらかにシニア向け。 おじいちゃんおばあちゃんが闊歩していて、そこへ“お付きの者”みたいな人間がぴったりとくっついて、共に店内を回っている。 ははあ、ああいう人が購買層なんだな。 一個50万円とかするお茶碗や、100万円もする仏像を買っていくのは。 さて見学してみた茶道工芸展は、私には惹かれるものがなかった。 夫は、家元直筆の掛け軸などはきれいだと思ったけれど、なにしろ高いなあ……と言っていた。 私の好みでは、素材感の感じられる肌合いのお茶碗が好きだ。 黒楽、鬼志野、伊羅保、萩も好き。 あと、学生時代には興味なかったけれど、年とって派手好みになったのか、織部も意外と好き。 そういう茶器がひとつもなかったので、いささか期待はずれだった。 とはいえ、値札には“御売約済み”のシールが貼ってあるものも多く、なるほどゼロの数が多くても買う人はいるものなのだな、日本橋三越でこの展覧会を開催するのは完璧に読みが当たっているんだなあと感心した。 お金持ちは不況でもいつでもお金持ちで、こういう美術品をばばーんと買っていくんだな。 洋服なんかいくら買ってもとうてい追いつけないくらいの金額を、あっさり買っていくわけだ。 デパートといえば日本橋三越、と考えている客層というのは、たしかに存在している。 数時間、館内を歩いてみてひしひしと感じた。 現に夫の祖母(90歳超)などは、 「三越に行くわよ!」 と言って 「どこの三越?池袋、銀座、新宿……」 などとマヌケな返事をしようものなら、 「バカねあたしがそんなところに行くわけがないでしょう、三越って言ったら日本橋に決まってるでしょう!」 とどやしつけるような人だ。 そんなにまで日本橋が聖地なら、いっそのこと他の店舗をみんなたたんでしまって、「やっぱり三越!日本橋三越!」と特権化するほうが、うまい戦略のような気がしてならない。 茶道具を見に行ったつもりが、デパート見学になってしまった。 私が買ったものは、茶杓一本1500円だけだった。
by apakaba
| 2005-10-16 22:59
| 歌舞伎・音楽・美術など
|
Comments(23)
>そんなにまで日本橋が聖地なら、いっそのこと他の店舗をみんなたたんでしまって、「やっぱり三越!日本橋三越!」と特権化するほうが、うまい戦略のような気がしてならない。
そうですね。 変に分散させないで日本橋だけ、店員にも世界でトップクラスのホテルレベルのサービスをさせる。 その分、商品価格は市価の5倍、10倍 それがまたステータスになって金持ちの心をくすぐるというのですね。 これからはそういうのがいいでしょう。 もろにドレスコードを設けて、既製品のスーツなんか着てる奴は入れないとか・・・ 某PTAの大嫌いな徹底した差別化を図る。 子連れは当然厳禁。 もっともどうあっても私は行けないけどね(笑)
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apakaba at 2005-10-16 23:13
コメント早いな。
だって新宿三越なんてあきらかに惰性でやってるとしか思えないのよ。 Loftが入ってるし(西武かい!)、ジュンク堂が思いっきりフロア占めてるし。ジュンク堂は大好きだからありがたいんだけど。 いやもう、カネモチという人種はいつでもいるもんだね。 お金が余ってしょうがないから、バカ高い美術工芸品とか買うしかないのよ。すごいわ。
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apakaba at 2005-10-17 00:06
Dですかあ?Dっていったら、まあ、Dですよねえ。
そんなに高飛車でいられるようなリッパな百貨店かしら。 バブル期かな。 いずれにせよ、差別するなら徹底的に、庶民がぐうの音も出ないような、むかつきさえしないような差別っぷりでないと、はんぱに高飛車だと一番戦略としてはだめですね。バブル期にはそういうお店(飲食店も)が多かったな。
dunhill
>いずれにせよ、差別するなら徹底的に、庶民がぐうの音も出ないような、むかつきさえしないような差別っぷりでないと、はんぱに高飛車だと一番戦略としてはだめですね。
そうなんです。 そうしないと変な苦情が舞い込んで結局差別化できず、逆に高い金を取られる方からも苦情が出る。 成田や関空のビジネスラウンジなんかいい例だと言ってました。 Soreyukeの友人の長者さまが・・・ 外国のラウンジじゃないと使う意味がないそうな
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紫陽花。
at 2005-10-17 07:11
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それにしても裏千家も習っていたのですね。引き出しの多いこと、感心です。日本橋は今あの無粋な高速道路の下ですっかり埋もれてしまったかつての街の雰囲気をもう一度復活させようと新しいプロジェクトを立てて頑張っていますね。街歩きが好きな私としては、完成が待たれます。時代は今「古き良きもの」を求める時代。 大阪の「そごう」もレトロで復活なるのでしょうか。
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apakaba at 2005-10-17 08:44
きゃー、やだなあ、国内の百貨店の話題でしょ〜。
国内ならD丸しかないじゃないか〜〜。 カルロスさん、私も一回だけ、ビジネスラウンジに入ったことがあるのですよ〜。タシケントで(タシケント?) でも貧乏性だからなのか、あまり意味を見いだせなかったな。 むきになってカナッペとかアルコールとか飲み食いしてもしようがないし。 紫陽花。さん、日本橋って「日本三大がっかり」と名付けてもいいような……東海道五十三次の起点が、すべての日本の道路の起点があれかい!って思いますよね。 私はあまり熱心な部員ではなかったので、だいぶ点前も忘れてしまいました。でも最低限のお道具の扱いとか畳の歩き方くらいは、なんとか覚えているものですね。
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紫陽花。
at 2005-10-17 09:41
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うまいなあ、「日本三大がっかり」ね。確かに、あと二つはなんだろう・・と、雨の朝に考える。
眞紀さん、カヌーもやってたっしょ、そして演劇、お茶と。旅、文学、あとまだいっぱいあるんでしょ、引き出し。 裏千家、習ったことあります。母は表千家の師範(お金で誰でも貰える)。亡き父は千宗室氏に似ていた(それがどーした?)。しかし、私に茶の心は失われてるな。静寂、一期一会。。
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apakaba at 2005-10-17 09:52
日本三大がっかりを募集しましょうか。
軽井沢の「白糸の滝」もかなりがっかりした記憶が。 天下の名瀑といわれているそうですが?? たしかに文字どおり、白滝みたいな糸こんにゃくみたいな滝ですが……とかいったら失礼ですね。 お父様が×宗室似とは……女たら×系じゃ、ないですか〜? 前にも書きましたが、茶人てけっこう……ソレ系じゃないですか? ああ、だんだん伏せ字トークが増えていく……
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K国
at 2005-10-17 10:20
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最近デパートに行った事が無い,買う物が無いんです
欲しいものが無いといったほうが近いかな、ホームセンターの方が 楽しめる性格なもんで、空想力の湧かない品物は興味が無い いろんな形の道具を見てると、本来の使われ方以外の用途を見つけ出す、本物より安くてかっこよく出来た時はニンマリです
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K国
at 2005-10-17 10:25
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紫陽花。
at 2005-10-17 11:24
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いやぁ、軽井沢の白糸の滝を「三大がっかり」に入れるのはやめましょう。美しいではないですか。それに別に名爆とは言われてないでしょう、あれは。密やかなものですよ。日本三大名爆のうち、「袋田の滝、華厳の滝」に行きましたが見事なものでした。あとは那智の滝だな。
で、三大がっかり、思いつきません。K国さんのように日本全国まわられている方の意見を参考にいたします。 茶人に○き者が多い?ほぅ。。ありえそうです。でも唐突ですが、映画評論家にホ○ってどーして多いんざんしょ。
私も昨日、一昨日と二日続けて日本橋の三越にいってました。
ひょっとしたらすれちがっていたかも♪ 殆どの時間を英国展の会場で過ごしていたので 茶道のイベントがやっているとは知りませんでした。 着物がとても高いものなのだな、とは知りましたけど。
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apakaba at 2005-10-17 13:52
へべれけさん、超お久しぶり書き込みありがとうございますー!!
きっと英国展ですれちがってましたね。 あそこ、無茶苦茶な人手でしたよね。 どうして日本人は英国が好きなんだろう……乱暴きわまりない括りですが…… へべれけさんのところで教わった菊の花のサラダ、つくりたいと思うと菊が見あたりません。早く試したいです。 生マッシュルームも大好物ですし。 紫陽花。さん、映画評論家関係はですね。 当メインサイト、「両性具有の美」をご参考になさってください〜。 「おか×が美を知る」ときっぱり書いておりますので〜。 K国さん、土佐のハリマヤ橋ってなんだぁ? あ、考えたら四国に上陸したことが、ない……自分
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紫陽花。
at 2005-10-17 14:14
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「両性具有の美」ですか、は~~い。
「土佐の高知のハリマヤ橋で、坊さ~~ん、かんざし買うを見た。よさこーい、よさこーい。。」じゃないですか、眞紀さん。 私も四国未踏の地です。いってみたいでーす、日帰りで。
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apakaba at 2005-10-17 14:22
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紫陽花。
at 2005-10-17 14:52
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そうそう、生臭い生臭い・・。
今「両性具有の美」のブックレビュー読んできました。考えてみれば、眞紀文章ファンですが、ブックレビューは真剣に読んでいなかったかもしれない。旅行記は繰り返し読んでいるのに何故だろ?あまりにも読書感想文が苦手で、読書感想を読むのさえおっくうになっていたのかもしれない。で、「両性具有の美」読んでみたくなりました。白州さんの町田にある武相荘(無愛想にかけた)を訪れたこともあるのに、著書を一つも読んでいなかったのだった。ただ話題のおばあさんの家とライフスタイルを覗きたかっただけのミーハー趣味。武相荘は故郷の昔の我が家を思い出させる純和風田舎家でしたが、そこは究極の趣味人、ただ者ではないライフスタイルを彷彿とさせるものでした。
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apakaba at 2005-10-17 18:18
じつはもっともチカラ入れて書いているのは書評欄だったりするのですよ……おちゃらけ抜きで。
白州正子さんというのはほんとにただもんじゃないですね。 晩年に至るまでとんでもない大食漢だったようで、かき氷が大好物だったとか、年寄りとは思えません。
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紫陽花。
at 2005-10-18 07:02
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「じつはもっともチカラ入れて書いているのは・・」ヒエー!です。ご、ごめんなさい!書評欄をほとんど読まない私でした。旅行記と日記で充分満足でございますので。私は好きな本がもう固定化してしまって、翻訳文体の本、つまり翻訳小説(特にミステリー)かファンである女性作家数名のものしか読まないのです。 あとは図書館・本屋にいって本の発するシャワーを浴びながら(イタタ)徘徊しつつ、これは面白そうだなあと思える本を選ぶのが好きなもので。
ところで、昨夜盛り上がっていた眞紀さんの「ホントに上手なこと」って。気になって寝られず・・。R35?
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apakaba at 2005-10-18 10:22
「書評」の悲しさは、まさにそういうところですね。
「おもしろかった〜」ではとてもカタチにならないし、どんなにがんばっても、とりあげた本じたいに興味がなければ、読んでもらえない。 でも心にひっかかってくれる人もきっといると思うので、これからもコツコツ書いていくと思います。 (紫陽花。さんが読んでくれなくても!シクシクシク) 私の上手なこと、う〜んなんだったっけ……ゆうべは浮かんだ気がしたんだけどな……
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Kay
at 2005-10-20 09:40
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私も裏千家でたしなみました。海外にいるとなかなかきちんとお茶をたてる機会がないのですが、いつかゆっくりと自宅で自分のお茶がたれればいいなとお道具だけは気が向くまま買い揃えてますね。でも高価なものではなくて、一通り必要なものだけですが、いつか小さな茶室を庭に作りたいとの夢を持っているのですが。。。。
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apakaba at 2005-10-20 15:32
私もね、結婚前の夢は「和室に炉が切ってあるおうち」だったのですよ……トンデモナイですわ。
いまや床の間さえ、物置状態ですから…… 抹茶を飲むのは好きなので、よく子供といっしょに点てています。 子供たちは和菓子が好きなので、よく合うね〜と言って飲んでいますよ。 やっぱりお茶とお菓子の相性ってありますものね。 |
アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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