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あぱかば・ブログ篇

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2019年 08月 23日

ベルリンのコインランドリーで

この間行ったベルリンのコインランドリーで、洗濯が終わるのを待っていた。
泊まっているホテルの近くにコインランドリーがなく、電車に乗って来た。
洗濯機と乾燥機が別々なので、洗濯が上がると乾燥機に移しかえなければならない。
そのタイミングを待っていると、私とタッチの差で早く洗濯が上がった若い東洋人女性が、山のような洗濯物を引っ張り出して、乾燥機2台を使って乾燥を始めた。
これにより、設置された乾燥機はすべてふさがってしまい、私はこんどは洗濯後に乾燥機が空くのを待たなくてはならなくなった。

クソーと声に出して言いはしないが、クソーという表情を、私はしたかもしれない。
東洋人女性は韓国の人のようだった。
他にも各国の旅行者や在住者が、長々とコインランドリーの中で過ごしていた。

やっと乾燥まですべて済んで、衣服をランドリーバッグに詰めて駅へ向かった。
洗濯のためだけに初めて来た駅なので、1番線か2番線か、どちらの方面へ乗ったらいいのかと、ちょっと立ち止まって表示を読んでいた。
「どこ、行きますか」
と後ろから声をかけられた。
先ほどの女性が、それほど流暢ではない日本語で、「どこ行きますか。駅。」と言ってきた。
「ポツダム広場駅です。」
私も日本語で答えた。
「あっ、こっちです。合ってます。」
ついさっき、コインランドリーでは無表情だったのに、照れくさそうにニコニコッと笑って階段を指差して、行ってしまった。

ベルリンのコインランドリーで_c0042704_23102616.jpg
奇しくも、ポツダム広場駅前には韓国の建造物が


私は果たしてこういうことをしているかなあ、自分の旅の中で……と、今までの自分の旅行を、その一言でザーッとふりかえってしまった。
私がどこかの国へ行って、そこでまた別の国の人が困っていて、たまたまその人の国の言葉を少し知っていたら、その言葉で話しかけるだろうか?

人の親切を最初からあてにした旅行はよくない。
けれども結果的には、旅行は人の親切で成り立っているといってもいい。
その親切は、いくら綿密に旅行を計画したところで、どこで受けることになるのか、当たり前だがまったくわからない。

もしかしたら、あの若い韓国女性は、私が乾燥機を使えなくなったときにクソーという顔をしたのを見たのかもしれない。
クソーという気配を察したのかもしれない。
だから帰り際に、お詫びがわりにちょっとコミュニケーションをとってくれたのかも。
もしかしたら、あの若い韓国女性は、日本が好きで日本語も少し話せるようになって、日本人を見るとうれしくてつい話しかけたくなっているのかもしれない。
もしかしたら、あの若い韓国女性は、あんなに山ほどの洗濯物を持っていたのだから、短期旅行ではなくて在住なのかもしれない。今夜中に洗濯をしないといけなかったのかもしれない。
そしてこの辺りではあまり見かけない東洋人を見て、ちょっとホッとしたのかもしれない。
時間にしてほんの数秒のやりとりから、こんないろんなことも考えた。

人は、人と会話しなければいけない。
洗濯にかかった時間は長引いてしまったが、本当に、旅の間はふだんとは別の時間が流れる。
あの人が話しかけてくれてよかった。
そうでなければ、私は彼女のことを「乾燥機を2台使って、私の貴重な旅の時間を奪った」人としか思い出さなかっただろう。


by apakaba | 2019-08-23 23:17 | 旅行の話 | Comments(0)


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