2005年 11月 17日
3度目のインドを旅行していたとき、たまたまある若い男性と少しだけ口をきいた。 彼はまだ学生だった。 『オレってばインドを旅しちゃってるの、スゴイ!?』といかにも得意げな様子が可笑しかった。 ネックレス、ブレスレット、指輪など、ありったけのインド製アクセサリーをつけていて、それらは『現地でがんばって値切って買いました。』と物語っていた。 毎日いろんな体験をして、すっげえエキサイティング。 ヤツらだましてくるけどそれもおもしれえ。 あそこにも行った、ここにも行った、“ハクつけるために(本人弁)”あそこへも行く……私がなにものなのかそんなことおかまいなし、とにかく日本人に日本語でしゃべりたい!という感じだったので、一方的にしゃべらせておいた。 ひとしきりしゃべりまくったようなので、 「ふーん、ひとりで旅行してるのか。家にしばらく帰ってないんだね。お母さんに電話とかしてるの?」 と聞くと、彼は『やだなぁやめてよ』という顔で、 「えーオレそういうのしたくないから。なんか、なんか恥ずかしいっすよ。母親にあらたまって電話なんてー。やだやだ、恥ずかしい。あ、ハガキは一回書いた、ハガキのほうがかっこいいじゃないすか。旅の空!って感じで!」 と、ぱっちりした二重の目をくるくるさせて言う。 その目をとらえる。 「ふーん。なるほど。でもね。あなたは毎日いろんなことがあって楽しくてしょうがないけど、待っている方はあなたのことだけを心配しているんだよ。ハガキなんて出してからずっとあとにならないと着かないよ。たまには電話しなさい。親はハガキがカッコイイとか悪いとかじゃなくて、たったいまあなたがどうなのかってことを知りたいんだから。」 「え?え?じゃあおねえさんは電話してんの?」 「ワタシおねえさんじゃないよ、お母さんだよ。3人子供がいるの。」 「えええええーーーーーーーっ!!!うそだ!うそ!うそでしょう!!」 「ウソじゃないよ(あきれる)……」 「うそだ!見えない!ちょっと待ってよオレすっげえ混乱してる!ど、ど、ど、どうしてお母さんがこんなところにいるの。」 「(いちいち興奮しやすい男だなあ)旅行が好きだから……あなたと同じに。だから家族に迷惑かけて出させてもらってる。旅をしたいあなたの気持ちもすごくわかる、でも待っているお母さんの気持ちもわかるの。出させてもらってるんならたまに消息を知らせるのは最低限のつとめでしょ。大きなお世話だと思うでしょうけど、電話してあげな。」 「そうかー……うん、わかりました。ここ(山)から降りたら電話しますよ。わーオレいい話聞いた。ありがとうございました!」 単細胞なやつだな。 でも彼のお母さんは喜ぶだろう。 ヨルダン・シリア旅行記を書いていたら、インドでの会話をふと思い出したので、息抜きに書きました。 (息抜きでも書くのか自分)
by apakaba
| 2005-11-17 19:04
| 旅行の話
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Comments(21)
アハハハ・・・いるいる、こういう「子供」。
私も何人、このタイプに会ったか・・・ 長期の旅がえらい、親に連絡しないのがえらい、 1日お金を使わないのがえらい、 パスポートのスタンプが沢山あるのが格好いい、 人のいかない所に行くのが格好いい 30歳まわって、このような子供に会うと、 眞紀さんと似たようなこと言いましたね。 でも笑うのは簡単だけど、20代前半の旅って私も同じような 考えをもっていましたね・・・(^^;; ちょっと恥ずかしいけど・・・ね。
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apakaba at 2005-11-17 22:03
人には誰しも、ハズカシイあのころ、がありますから。
ogawaさんは「バックパッカーはインドをめざす」って本は読みましたか。 似たような感じのエピソードがあって……あ、これ明日のネタにしようかなー。
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のこのこ
at 2005-11-17 22:09
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あはは。かわいー!
インドってこういう子がいっぱいいて、まぶしいというか、うっとおしいというか、オイオイ世界狭めてどうするんだオマエ!というか、世界はひろいんだぜよ、他見てみろ。つかアンタの日本での身の回り・・・ちゃんとみろ~。 って子も多くて。 でも、みんなみんなかわいいですわ。 言葉が悪いけど東南アジア止まりとかインド止まりの旅行者はどうしても世界が陸続きで全部つながっているんだよ、という実感が希薄なのね。 まだまだ旅自体が楽しい! って、もうそりゃおおいに結構だけど、 旅のむこうにあるもの・・・というかこの地の先にあるものとか地球の大きさとかが、なんとなくすっと思い描ける、ワタシはそんな旅をしたいしそういう旅人でありたいなぁと思っているのです。 ・・・ということを、来月学生達にはなしてあげようと思っているの。
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apakaba at 2005-11-17 22:24
鉄道写真撮っている瞬間は、実家のことを忘れていますが・・・
スペインに行っている時に父の手術がありまして、電話できるときは出来るだけ、電話していました。 インド旅行から帰る時、自宅に電話したら誰もいない。 祖母の逝去を知ったのは、その12時間後でした。 携帯電話が今みたいに、普及するずっと前のことです。
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apakaba at 2005-11-17 22:43
suzeさん……酒バトンであんなにヨイショ!!(?)したのにコメントはーっ?
て、いえいえこちらにコメントありがとうございます。 あれ、ボジョレー解禁はもうええのですか? もう飲んでいらしたんですか。 私は旅行中にはネットカフェに入らない、国際電話のできる携帯を持たないことにしていますがそれも短期だからでしょうね。 てか近い将来、だれもが当然の旅小物として携帯を持って行くんでしょう。 「電話局へ行って電話をかけるのが半日仕事」だったのも、ノスタルジーでしかなく。
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紫陽花。
at 2005-11-18 05:54
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しかし、旅行記を書く息抜きにもまた書くとは、ほんとに書くことが好きなのですねえ。しかもブログ記事はほとんど15分くらいで書いてるんでしょう?私は、最近しみじみ、美しい文章や楽しい文章を読むことが好きだとやっと自分のことが分かりかけて来たのですが、それらを読む息抜きに、また読むということはあり得ないな。 まあ、息抜きは食べることでしょう。実に当たり前ではじゅかしいのですが。ディープなドリンカーの多いここでは、お子ちゃまでまたさらにはじゅかしくなる、昨日のボジョレーヌーヴォーの解禁も楽しんじゃいました。やっぱ、ワインはフルーティでしょ(^^) きゃー、石のつぶてが・・。
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K国
at 2005-11-18 07:33
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私らが20代の頃は、海外旅行なんて発想の中に無かった時代
せいぜい国内を走り回る程度でして、自分の事を考えてみると あまり旅行者同士で交わってない、旅先の地元の人たちとは何度かお世話になってるのですが、一人でフラフラ旅するのが好きだったのでしょう 今の方がキャンプ場とかで宴会を楽しみに旅行してるくらいです 自転車で東京に行った時も、四国で半日一緒に走った奴がいたのですが、途中で鬱陶しくなって振り切って先に行っちまいました かっこつけてる訳ではないのですが、人に合わせきれなかったのでしょう そう思うと20代の自分は変わった奴でしたね
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apakaba at 2005-11-18 08:27
書くのは好きですねえ、というより話すのがニガテ。
人と一緒にいても、「私がしゃべってもたいしておもしろくないだろうなあ」とか思ってしまうので、聞き役に回ってしまいます。 よほど仲のいい相手でないと自分が話をするのはイヤですねえ。 「ササニシキ」は読むのが好きだけど息抜きも「読む」らしいですよ。 集中しないといけない本をずっと読み続けていて、疲れたらミステリーとか冒険ファンタジーとかを読むらしい。 荻野アンナも、読む息抜きも読む、って書いていました。 ボジョレーおいしかったですか!いいなあ!私も買いに行こうかしら。 ボジョレーの話は03年11月分に、二日つづけて書きましたよ。 K国さん、やはり人は変わるんですよね。 私も20代前半のころ、友人とふたりで長旅をしましたが毎日のようにいがみ合い、ていうか私がいつも友人につっかかっていました。 現地の人間とも派手に言い合いをするのはいつも私でした。 いまなら考えられません。
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Kay
at 2005-11-18 08:48
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私は20歳で結婚して、21でインドにわたりましたので、結構こういうばっくぱっかーには出会いました、というか、我家に結構押しかけてきました。インドで避暑地に住んでいたため、体調を崩した日本人の若者が結構来ましたね。我家で数日、長い人で2週間面倒見たりもしました。下手すると私の方がその人たちより若かったりして(そのころ)。皆さん気持ちのいい人でしたが、中にはとんでもない人もいましたわ。みんな、そうして大人になっていくのでしょうね。私たちの若いころは国際電話なんて、親の生き死にぐらいでした。それが今は世界中どこにでも携帯が付きまとっています。電話するより、SMSで携帯メールを使うことのほうが多いですね。子供たちとも、まとまった話はインターネットのメールで、ちょっとした「元気?」みたいなのはSMSで携帯に入ります。
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apakaba at 2005-11-18 09:07
Kayさん、そうですね、若いので大目に見て……という気持ちはあります。いわゆる「いい大人」になってまで若造みたいな傍若無人な旅をしている人は逝ってよしですが……
連絡をとるスピードと手段が、ここ10年くらいでまったく別の世界のように変わってしまいました。 街の中心地に出かけて中央電話局探し歩いて、電話ブースの順番待って半日、なんて、シンジラレナイという顔をされますから。 「待っている親」世代も、すでに現在の通信手段の時代に生きているので、ハガキをぼけぼけ待っている状態ではないんでしょうね。
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紫陽花。
at 2005-11-18 09:26
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過去記事読んで参りました。あー、良かった。「ボジョレーの果実酒としての本来の味わいと、ビタミンCが体に入っていく感じ」だったかな?既に忘れはじめて・・。そのコメントを見て安心しました。「あんなのはワインの風上にもおけぬ・・」とかコメントがついていたりしたらどーしよかと思ってました。おこちゃまドリンカーとしても、まあジュースだなあと分かり始めましたが、やっぱり、新酒を尊ぶ・・との意味づけもいいね。
ゆんべのヌーヴォーは○ーソンで買った2400円の物、高!い、けど、飲もうと思った時間が8時過ぎていて既に酒屋さんに行く気力なしでして。語彙がないので、ただ美味しかったと・・。 寡黙な眞紀さん、「沈黙は金」です。頭良さそうに見えていいのじゃよ。私は喋りすぎのきらいがあり・・。 「息抜きも読む」か~、でも彼らは2人とも作家、そして作家の卵(ササニシキ君)じゃないかー、ホントに文章好きなのだな。私は「美しい文章、楽しい文章を読むのが好きの世界」でもまだまだだー。
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apakaba at 2005-11-18 09:48
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紫陽花。
at 2005-11-18 16:43
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第3話、読みました。う、コメントしたいけれど、オーナーから「あまりに逸脱するので」とクギをさされてしまった。。で、書きたいけれど感想は・・・。
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apakaba at 2005-11-18 19:01
いえ、そんなにイヤなら無理しなくても……べつにここに書いてくれてもいいですよ。
ただメインサイトとブログは見る人間がちがうので……それだけのことです。
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紫陽花。
at 2005-11-21 08:28
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このインド話をもう一度読み直して。じゃらじゃらアクセサリーをつけて「おれってばすごい?」みたいな若者、私の若い頃にもいたなーと思い出しました。今から30年前は、学生の短期留学もまだ珍しかったのですが、アメリカ帰りのサークルの先輩は、両手に8本の指輪をして帰ってきました。英語をみにつけたかどうかは知りませんが、アメリカ文化、あの頃はヒッピーかなあ、に影響を受けてきたのでしょう。記憶が定かではありませんが、あの指輪は印象的でした。若いって恥ずかしいものだとは思いますが、あの先輩もそんなことを覚えていて欲しくはないでしょうね。私だって、いっぱい恥ずかしいことをしてきましたし、まあ、今もしてますが、自分のことはよく見えないものですので。 で、その先輩、卒業後25年経って、同窓会で会いましたが、うーーん、よい年の重ね方をしてきたようには・・。 このインドの青年はどんな中年男性になっているでしょうね。
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apakaba at 2005-11-21 12:37
ヒッピーですかー、いまや逆にかなりカッコイイですね。
もちろん髪は長いわけですね。 しかし同窓会!!!とな!!!私の中・高・大学ではほとんどそういうのやったことないので、うらやましー感じ。 あれって言い出す人がいないとね。 この記事に載っている若者はまだ若いでしょう。 だって最近のことなので。たぶんまだまだ20代ですよ。 40代50代になったときにどうなんでしょうね。 ファッションなんかも、過去を振り返れる世代の人間にとっては恥ずかしくても、振り返れないくらい若い世代から見ると新鮮でカッコイイものなんですよね。 60年代、70年代ファッションなんかそうですね。
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紫陽花。
at 2005-11-21 13:22
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あ、そうかー、3度目のインドとありましたね。でも、「おれってばインドを旅してかっこいい?」なんて思うの、現代では古!と思ったのです。今の若者ってもっとクールかなあと。まあ、いろんな人がいる訳ですね。
同窓会もそうですねー、マメなまとめ役が必要ですね。30代で会社でもまだ忙しかったり、子育て真っ最中な間は無理かもしれませんね。40代半ばくらいから同窓会が始まるような気がします。 楽しいですよー。昔の憧れの君の頭髪が・・(以下略)。。目立たなかったあの子がすごい美人になっていたり。よく聞きますが、ほんっと、その通りです。「変わらないねー。」と言われても、その後ろにある表情を読んでいます、私は。やっぱ変わらない訳ないですもの。目の周り、ウエストの周り。時は着実に、誰にも等しく。ただ優しく降りて来る場合もありますよね^^。 ヨルダン・シリア旅行記、あんな終わりかたって! ロストバゲージ、眞紀さんとササニシキ君の横で、私も当惑してます。もう恐怖に近い思いで。。いったいこれからどうしよう・・。
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apakaba at 2005-11-21 18:04
変わらないっていい言葉なのかなー。
体型、に関しては、まあほとんど褒め言葉ですよね、若いころが猛烈肥満だったとかでなければ。 「顔」に関しては、やや複雑ですよね…… 私は小学校時代の友達に、顔が「変わらない」と言われてやや苦しみましたね。(2002年12月分所収) 旅行記つづき、あれからまったく執筆していませんでしたが紫陽花。さんのお言葉で数行書き始めました。せかされないと進まず。
もう早くいってよ、おそいんだからぁなんてきこえたような。
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apakaba at 2005-11-22 00:07
あんまりはやいのも、ねぇ。
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アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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