2006年 02月 06日
きのうの記事にはたくさんのコメントが寄せられて、とてもうれしかった。 (なぜか書き込むのがおじさんばかり、というのが些か気になるところだが。子育て中のお母さんにはむしろ現実的に過ぎて客観的に書きづらいのかもしれない。) それぞれの経験、それぞれの立ち位置から語られる言葉は、それぞれに重みがあり、よくも自分は、こんなにいいお友だちと知り合えたと感謝している。 是非、元記事だけでなく、コメント欄も読んでいただきたい。 子供を、逃げ場のない状態に追い込んではいけない、逃げ場を作ってやらなければいけない、ということを、複数の方が語っておられた。 今の私には、それは心からよくわかる。 手で触れるみたいに実感できる。 けれども、実をいうと、長男がまだ私からのダブル・バインドに苦しんでいたころ、私にはその真理がよくわからなかったのだ。 なぜか? 子供時代の私には、その“逃げ場”が用意されていなかったからだった。 何度も本欄に書いているとおり、私は9歳で父親を亡くし、7歳年上の姉と、母親との女家族で育ってきた。 甘えられる祖父母もなく、ご近所の方も、新興住宅地の土地柄、長屋づきあいのようなおつきあいとはほど遠かった。 仕事で疲れきっている母親が怒り出すと、文字どおり家の中には逃げ場はなく、怒りが静まるのを、首を縮めてただ待つだけ。 そういうときに、自分をまったきものとして肯定してくれる誰かに甘える、受け容れてくれる誰かのところへ逃げ込む、という行動パターンを知らないまま、自分も幼い母親になってしまった。 許せないものは許せない。 理屈の通らないことは見過ごせない。 悪いことをした子供は、親から叱られなければならない。 そう信じてきた。 だから父親(夫)が子供を叱りつけていると、私もいっしょに怒っていた。 けれども後で、 「どうしていっしょになって追いつめるんだよ。君まで怒ってたら子供に逃げ場がねえだろ。役割分担しなきゃしょうがねえだろ。」 と夫からNGが出て、『正義漢』の私はすっかり混乱する。 なんで? 悪いことした子に「よしよし」なんて、おかしいじゃないの。 「べつに『よしよし』なんてしなくてもいいの。ただ、やっぱり怒鳴ってるってことは、親といってもその瞬間は感情的になってるんだから、もう一人は冷静にしていろってこと。」 夫は、共働きの両親の代わりに、それこそ『孫はとにかくオールオッケー、全・肯・定』の権化のような祖母から寵愛を受け、育てられてきたのであった。 私とは正反対の子供時代を過ごしてきたのだった。 若い愛・幼い愛とはまたちがう愛をたっぷり注がれて育ってきた人は、やっぱりそういう愛を体得しているんだなぁと、目から鱗が落ちた。 私の子供たちには、祖父母や曾祖母もたくさんそろっているし、会えば肩車やゲームをしてくれる近所のお父さん、気軽にごはんを食べさせてくれて、家に泊めてくれるお母さんたちがいる。 その外側に、うちの子供を直接知らなくても、学校に通う子供というだけで温かい目で見守ってくれる大人が、たくさん住んでいる。 いろんな種類の目に見守られている。 自分の子供時代を振り返っても、自分の子供たちがうらやましいくらいだ。 “一方向からの強烈な目”は、子供にとって閉塞感しか生まないものなのかもしれない。 ほんと、自分でも、やっと大人の領域に入ってきたなあと思える。
by apakaba
| 2006-02-06 22:38
| 子供
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Comments(18)
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K国
at 2006-02-07 07:52
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私も母親よりも祖母に育てられた、親よりも私を信用してくれてたし
懐が広かった、目先のことを言わなかった 私が高校を辞めると言ったときも、一人だけお前が言うのならと賛成してくれた、家を出る時中一の弟から兄ちゃん逃げるんかと言われた 金のことで夫婦喧嘩が激しくなってたので親父に対する鬱憤が せめて勉強なと出来る子になれと、はけ口が私に来てた 私が居なくなると標的は弟になる(弟も高校は鶴崎工業に行って下宿した)そんな弟も淡路島で現場監督の監督にまでなってる 安藤忠雄氏の建物も数件建て(羨ましい)、家も買って今では淡路の人 だから姉、私、弟と親から資金援助は受けたことがない 結婚式の100万も私が用意した、美幸さんが姉に親の教育が良かったのか兄弟自立してますねと言ったら あんなふうになりたくないって言う反面教師だよって
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紫陽花。
at 2006-02-07 07:57
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子育て。確かに母親にとっては生々しすぎて語るのは難しいです。永遠に終わりのない旅のような物ですし。生涯子供については心配して過ごしそうです。母がそうであるように。
「ダブル・バインド」、知らない言葉でしたが、本能的にそれは避けてきたような気がします。ただ、エキセントリックに子供を怒ったことのない母はいないと思います。今思えばたあいのないことで。私の場合、隣のK君が「天才君」で、同年齢の時に、彼が読めた数字を娘が読めないからとカッとなった嫌な思い出があります。娘3歳の頃です。教育ママだった。その天才君が普通の青年に成長して、子育てにあせりは禁物だと、当たり前のことが、いまだから言えます。 「親になること」について勉強した訳でもなく、子供を持つことによって初めて親になり、手探り、夢中の子育てでした。子供を持つことによって、喜びと同じくらいたくさんの哀しみも知ります。自分が変わってやりたい、手の届かないつらさがどんなにかあるかを、痛いくらい知ります。それによって自分も成長してきたような気もするのですが、これも確かなことではありません。
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紫陽花。
at 2006-02-07 07:59
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K国
at 2006-02-07 08:11
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私も人の親になり、子供を育てた数だけ大人になったのかは?
自分が言われて嫌だった事は言うまい、勉強をしろは封印した その代わりに長男が高三の時、工業系の大学しか認めんのと浪人は許さん、働く場所がなかったら俺が見つけてやるだけでした 次男は最初からコックでしたので高校から調理科のある高校でバイトも 魚の卸、別府のホテルに収めるところで鍛われました 娘は鶴崎工業デザイン課へ、勉強が嫌いと言うので絵を描いて楽しいぞ~とアドバイス、卒業の時楽しかった~と言ってました その後大阪の美容専門学校、今ではエステに燃えてます 建築の跡継ぎは居ません、この職業キツイ割りにリスクが大きい 私が経験してきたのと同じレベルには到底なれない、淡路で私の後に 続いたのは4年後に入った弟まで20人は辞めている 仕事を見つけて契約して施主に建てた家に満足してもらいお金を頂く 100軒建てて1軒騙されれば会社は潰れます、私が作って終わるでよし
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K国
at 2006-02-07 08:13
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次数制限の間に姐さんのお邪魔してたんですね
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apakaba at 2006-02-07 08:33
朝からたくさんありがとうございます。
紫陽花。さん、ややや、おじさんばかりではなくやっとおばさ○が……!伏せ字だからなんのことだかわからないと思いますが! 小さい子供から見ると、親って絶対的な存在(圧政を敷くという点でも)だけど、やっぱりあとになって考えると、そのときの気分とか状況とかで子供に当たっているときもあったんだろうなと。 私の母は、私が結婚したとたんに、私のことはいっさい夫に「任せた」となりました。結婚するまではなんだかんだと怒られていましたが、結婚してからは一度も怒られていませんねえ。所帯を持つとはこういうことかと感じました。 長い目で見ましょうということを、私も生徒さんのお母さんにしばしば言います。
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apakaba at 2006-02-07 08:42
親が勉強しろといっても、関係はよくならないですしね。
私は、いまの小学校は自分が小学生だったころの半分しか学習をしないので、さすがにそれはイヤなので、子供が小学生のうちは、「宿題をやれ」と言うようにしています。でも中学生からは自己責任です。ごろごろ寝っ転がっていて塾に遅刻している息子には「こら、塾へ行け」とは言いますが、漠然と追い立てるような「勉強しろ」はもうまったく言いません。 偏差値的には全然ろくでもないんだけど、自分の子供たちの「知性」はかなり信頼しているので、大人になったときには、まあそれなりに知的な人間たりえるだろうとは感じています。だから勉強しろは言わなくても大丈夫そうかなと。 K国さんのお子さんたちを(ふたりだけど)見ると、なんとなくその「大丈夫そうかな」の気持ちに「うちのもあんな3人兄弟になるかな」という楽しみな感じが加わりますね。
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紫陽花。
at 2006-02-07 09:27
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おばさ○とは誰のことかとお○さん言い・・。全然分かりませんですねえ。○ばさんは手強いですよね。おじさ○を越えていると思います。以前も書きましたが、お茶の水女子大の教授が、週間文春でエッセイを書いていて銀行で読んでは笑いをこらえているのですが、「生まれ変わったら、女性にしかもおばさ○に生まれ変わりたい」と。人生経験を積むと、どんな出来事にもかなり動じなくなります。K国さんしかり。K国さんは偉大なおじさ○ですが。
この記事で、反面教師という部分も興味深かったですね。友人にかなり特異な性格の人がいて、同性の友人にどちらかというと好かれない人がいます。え?何故、友人か?まあ、いろいろあって。 で、その好ましくないと思われる(きつい、ケチ、その他諸々)彼女の息子さんがとても素敵な青年に成長しているのです。噂になるくらい、周りの人に対する気配り、ソフトな物腰、見た目も彼女の息子とは思えないくらいカッコイイのです。(余計なことですね(;;)彼を見るといつも「反面教師」という言葉を思い出します。そんな例を一つならずみています。。
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apakaba at 2006-02-07 09:55
わかりづらい伏せ字で、ほんと申し訳ありませんでした。
外国を旅行していても、とにかく困ったことがあったらそこのおばちゃ○(また伏せ字で)を味方につけてしまうことですね。 世界共通世界最強の人類、それはおばちゃ○…… 各々のご家庭の様子は、たしかにわかんないですねえ。 子供の精神年齢が上がってくると、話をする相手としてぐっと楽しくなりますね。
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那由他
at 2006-02-07 12:56
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お母さんへの呼び出しが聞こえたので、出てきました。
うちは厳父・慈母です。(自分で慈母って…)お父さんは怖い、お母さんはフォローという役割分担になってます。意識してそうなったのではなく、もともとの我々の性格によるものです。また、それぞれの実家の父母もそういう感じだったので自然とそうなりました。 子供が赤ちゃんの頃は、危険なこと(例えば何かを口に入れる等)は、手をパチンと叩いて止めさせていましたが、言葉が十分通じるようになってからは、「言い聞かせ」ていました。 子供が自分の主張をする時、一概には言えませんが、理屈で育てられてきた子は理屈で、手を出されて育てられてきた子は手を出す傾向があるようだと、友達と話した事があります。子供への接し方が子供にも影響する場合が多いのでしょう。
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那由他
at 2006-02-07 12:56
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別の友達が貸してくれた「Itと呼ばれた子」では、虐待した母親も、自分の母親から虐待を受けていたということが後でわかりますが、著者はその悪循環を断ち切って、息子とよい関係を結びます。
うちの子の場合「ヤンチャ」でなかったので、そう苦労はしませんでした。 私の母も「勉強しなさい」と言わない人でしたが、うちの子も言わなくて済んでいます。 ただ、友達の家に遊びに行って約束した時間に帰らなかった時は、私も心配したせいもあって、きつくしかったことがあります。感情が高ぶって「あぁ、今私は感情に飲み込まれているな」とわかるですが、「もうどうにも止まらない」状態で、言わなくてもいいことまで言ってしまいました。 お母さんだって、いつも受け入れるだけでなく、感情を持った人間なんだから、感情に支配される時もあるんだ、こういうことをしたら、人は気分を害する」とわかっていいかなと思います。 自分の子ですが、人対人で接すると、面白い(interesting)な子だと思います。
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apakaba at 2006-02-07 13:42
わーい、おかあさ○が書いてくれたよ〜。あ、伏せ字の必要ないじゃん。うちもお父さん怖いです。見た目はお兄さんみたいだけど、中身は超カミナリ親父です。
私は怒り狂うのをやめたら、やっぱり那由他さんのおうちのように、私があまり厳しくしないほうにまわりましたね。 「Itと呼ばれた子」はどうも読む気になれず(つまらなさそうという意味ではなく)あらすじしか知らないのです。こんど読みますね。 子供はそれぞれinterestingですね。ちっとも思い通りになりませんが、思いがけないほどのものを、やっぱり、くれますね。
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喜楽院
at 2006-02-07 22:26
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教授「親が子を叱るのはどんな時かな?」
助手「簡単です。親と子の間で取り決めたルールを 子供が守らない場合です。」 教授「うむ。多少の例外はあるかも知れんが、 ま、おおかたそうじゃろう。で、喜楽院様のお宅は どうなのじゃ?」 助手「はい。親子間で決めたルールを子供たちは比較的 しっかり守っているようです。喜楽院のバカに言わせると、 子供たち3人は皆、いい子でいい子で困っちゃうそうです。」 教授「ほほう。さすが喜楽院様。たいしたもんじゃのう。」 助手「ただ、問題がありまして、親子で決めたルールは、 毎回、喜楽院のバカが一方的に破るそうでございまして、 喜楽院のバカは朝晩、お子様達の罵詈雑言を浴びている そうでございます。」 教授「親になってはいけない人間が、親になってしまった 典型的な例じゃの。おいたわしや。」 助手「同感、しきりでございます。」
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apakaba at 2006-02-07 22:43
親父の地位は年とともに右肩下がり、まあ健全でしょ
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Amano
at 2006-02-07 22:53
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眞紀さん、えらいな~~。
自分の心のうちを正直に吐露されている。 私なんかカッコつけちゃてダメです・・・^^; 子育てを通して見えるものがいっぱいありますね。 「おうた子に教えられ」の言葉が身に沁みます。
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apakaba at 2006-02-07 23:59
渦中にあるときには、とても人様に告白などできません。
男の空元気、ダンディズム、はったり、カッコつけ、ときにはいいと思いますよ。
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那由他
at 2006-02-08 12:21
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「It と呼ばれた子」を読んだ前後に、日本も、児童虐待の事件が続けて起こったので、アメリカのあとを日本も追っていく傾向があるのかなと思いました。
かなりこの本の内容は、しんどかった。第三部くらいになると、ずいぶん救いがあります。 同じ友達が貸してくれた「佐賀のがばいばあちゃん」。 島田洋七さんは知っていましたが、こんな生い立ちだったとはしりませんでした。 このおばあちゃん、「がばい」素敵です。
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apakaba at 2006-02-08 14:06
「がばい」とはなんなのかと思ったらすごいという意味なのですか。
島田洋七さんは以前に住んでいた家の近所だったみたいで、しょっちゅう見かけていました。昔は売れていたんだ、というプライドも感じられたし、身のこなしに殺伐としたものを感じていたのですが、そんな感動的な本を書けたとは。知り合いじゃないけど、よかったなと思いました。 日本がアメリカに近づいていくとは一概には言えないんでしょうが、成熟化社会は似た傾向の末路をたどる、という共通点はありますね。 |
アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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