2006年 03月 17日
子供が家に来て、勉強を教える教室をやっている。 難問つづきになってくると、彼らはよく手を休めて、 「あーあ。2年生に戻りたいなあ。だって九九とか簡単だもん!」 「1年生に戻りたいなあ。漢字とかも簡単だったし!」 と、自分の学年より下の時代に、戻りたがる。 「大人になりたくないなーっ。」 「うん、大人になるのヤだよねー。これからもっともっと、勉強難しくなるんでしょー。」 この流れになると、たいてい誰かが 「ぼく、赤ちゃんに戻りたいよ、だってなーんにも勉強しなくていいし、大人に怒られないし。」 と、極端なことを言い出す。 だから私が、 「えっ。赤ちゃんに戻りたいの。おしっこもうんちも、おむつの中にするんだよ。やってもらわなくちゃ一人でお尻も拭けないんだよ。そんな時代に、キミは戻りたいのか?お尻くらい自分できれいにしなよ。」 と(真面目な顔で)からかうと、 「やだやだ、やっぱりそれはやだ。でもみんなにかわいがられてさ、一日中、なにやってても自由でさ……でもおむつはやだな、やっぱり5歳くらいがいい。5歳に戻りたい。」 彼らにとっての郷愁の時代は、『義務教育に入る以前・トイレは自分で始末できる5歳くらい』ということに落ち着く。 「先生、先生も昔に戻りたい?うちのお母さんは高校時代に戻りたいっていつも言ってるよ。高校時代が一番楽しかったーって。」 「先生が戻りたいのって何歳くらい?」 女の子たちはとくに、そういう話が好きだ。 「いや。私はぜんぜん戻りたくないね。きのうにだって戻りたくない。」 目を見て真面目な顔で答えると、生徒は驚く。 「へえ!そうなの!あたしもう1回1年生からやり直したいとか思うのに。先生は戻りたくないの!」 「先生は大人でよかったって思う?子供に戻りたくない?」 「戻りたくなんかないねえー。そんなやり直すなんてめんどくさい。今日の自分が一番いいよ。大人、最高。このままどんどんいって死んじゃって、また新しく赤ちゃんになってしまったほうが早いわ。」 生徒はもう目をくりくりさせて驚く。 時間の流れ方ととらえ方が、あたしと先生では、ぜんぜんちがうんだ! 子供に、子供扱いした態度を決してとらない。 いつでも、大人としゃべるときと同じ態度、同じ口調でそういう話はする。 でも、たまに低学年に向かって、わざと赤ちゃん言葉で採点や解説をすることがある。 子供が疲れてきたときや、飽きてきたときに、それで注目させる。 「ちょーでちゅよろちい。あってまちゅ。あい、おちまい。」 などとトーンを下げて言うと、子供は必ずいやがる。 「先生ー、どうして赤ちゃん言葉になるのーっ。おかしいよー、ぼく赤ちゃんじゃないのに!先生がヘンなんなった!」 ついさっきまで赤ちゃんに戻りたいと言っていたくせに……やっぱり、赤ちゃんに戻るのはいやなんだね。
by apakaba
| 2006-03-17 13:48
| 子供
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Comments(10)
子供ってえらくプライドが高いから結局こうなるわけですな。
私も小学校3年ぐらいになったらいっぱしになんでもわかるしなんでもできて、子供扱いされるのイヤでしたね。だいいち母の帰りがおそかったから薪割りして風呂わかして兄ちゃんのためにご飯作ってさ。どうせ甘えられないし。信頼してる、という言葉がよりどころでした。 なので小学2、3年くらいの子にはなにごとも手加減する気になりませんね。むしろ負けないように必死!
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apakaba at 2006-03-17 23:54
キョヤジさんは夫と同じことをいうなー。
トランプでもテレビゲームでも、カルタでも、絶対手加減はダメだって。 ちっとも似てないのに不思議だ。 のこのこさんは立派な子供だったんだね。 周り見てると、若い女性がかえって子供を子供扱いしてるかな。 妙にかわいいしゃべりかたをしたりして。 子供ってそういうの敏感だから、大人の高い猫なで声より、低めの落ち着いた声のほうがまともな反応をするんだけど。
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Morikon
at 2006-03-18 00:05
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知り合いの夫婦は、「子供が機嫌を損ねるとイヤ」なので
トランプでわざと負けるそうですが、その感覚は理解不能。 というか理解したくないですね。 人生の早い段階で「世の中、自分の思い通りにならないことは 山ほどある」と認識させたほうが良いですよ。
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紫陽花。
at 2006-03-18 05:57
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「やり直すなんてめんどくさい。今日の自分が一番いいよ。」 賛成!
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K国
at 2006-03-18 07:48
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私も子供に手加減はしません、焼肉でも譲らないので目が血走ってます
肉焼いてる最中、友達から電話がかかった長男は、今焼肉の最中だから後で電話する、と言ってあわてて切ってました 私も小学生の頃には、大人のやさしそうに見えてずるい人や、みんなの受けは悪いけど子供には正直な人だとか、自分の中で大人を判断してました、近所の町会議員が一番性質が悪かった お祭りの時に猫なで声で褒めといて、売り上げを独り占めにして皆と飲んでた。朝から晩まで鐘を叩いた子供達は、少しの小遣いが楽しみでお祭りに行ってるのです、何時もだと300円ですが町会議員の時は0円で 世間が言う変わり者のときは500円もくれた。 その人お祭りの太鼓を叩いてました、子供の苦労が分るのと、正直な人なので世間は煙たかったのかも 肩書きや人の意見じゃなくて、自分の目で判断するのが大切を知った
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那由他
at 2006-03-18 11:07
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強いストレスを受けた子供が、幼児返りすることがあるようなので、きっと心のバランスをとる上で「昔の自分に戻る」ということは、何かしらの「癒し」の効果があるんだろうと思います。
お年寄りが、自分の子供夫婦を、親だと思ったりするのは、娘時代に戻っているんでしょう。 世の中には、「昔の自分に戻る」ことが必要な人もいるんでしょう。
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那由他
at 2006-03-18 11:07
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私自身で言うと、昔の自分と今の自分と、比較したりすることはありません。
昔があって、その延長上に今の自分があると思ってます。 もちろん、昔のことを思い出すことはあります。 あんなこと考えてたなぁとか、あんな出会いがあったなぁとか。 でも、脳は、自分の思い出したいように記憶を変えたり、つじつまを合わせるらしく、 実際のことと、記憶とでは、違っている場合があるそうです。 記憶より記録…昔の自分が書いた日記など読み返すと、新しい発見があります。 原田宗典さんの「おまえは世界の王様か」という本があるのですが、20歳の頃のムネノリ青年の文を、40歳を過ぎた原田宗典さんがコメントをつけるという形になってます。20歳ムネノリ青年は、「王様のようにえらそうに」読んだ本、見た映画の感想を書き綴っていて、それを40歳過ぎの宗典さんが、ツッコミをいれたり、感心したりしてるのが、非常に可笑しいです。 過去の自分を、客観視すると、面白い人間だったなぁと思えます。 そんな過去の自分がいて、今の自分がいるんだなと思います。
あんまり昔に戻りたいとは思わないですね。
あんなことよく乗り切ったなぁ・・・・今考えるとぞっとするとか。
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apakaba at 2006-03-18 23:25
いっぱいコメントありがとうございます。
Morikonさん、どうも私の親しい人は同じ感覚を持っているらしい…… 紫陽花。さん、若いころの写真とかって素朴に恥ずかしくないですか。 K国さん、うちのはす向かいにも、とてもコワイ顔の独居老人が住んでいて、その人はいつも子供に飴をくれました。引っ越しましたが。 那由他さん、ムネノリ青年とのかけあいはまるで22歳の私の旅行記みたい……自分でも厚顔さにあきれてますが。 はなまちさん、 >あんなことよく乗り切ったなぁ・・・・ この一行に涙ぐんでしまう。 |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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