2006年 04月 06日
きのうのお昼ごろ、「アキタコマチ」の担任の先生から電話がかかってくる。 「アキタコマチ」に、明日(つまり今日)の始業式に、新6年生のスピーチをしてほしいという。 『最高学年として今年度めざしたいこと』と、『この小学校をどのような学校にしていきたいか』について、生徒代表として式の中で話すのだそうだ。 今日中に原稿を書き、始業式当日の朝にチェックをする、というすごい杜撰さ。 パーティーとかの突撃インタビューじゃあるまいし、ふつう、せめて何日か前に言わないでしょうか? 「アキタコマチ」は名誉な役目に一瞬うっとり、すぐに「大変だ!原稿を書かなきゃ!」とあわてだした。 私が助けてやれば3分で書き上がるだろうが、それではオトナのスピーチになってしまうし、こういう苦労は望んでもなかなかできないことだから、なんとなくそばにいてぎりぎりまで黙っていて、「どう思う?」と聞かれたときだけ助け船を出してやる。 「どうやって話し始めたらいいんだろう。おはようございます、じゃセンセイみたいだし。皆さん、とかいうのもヘンだし。オレ、道徳のテレビみたいなのやだし。自然に話しかけるようなのがいいんだよ。」 ……「最高学年として、下級生をみちびき……みちびき?なんかエラそう。指導し、ん?指導なんて先生みたい。どうしよう、どう言ったらいいと思う!」 「下級生“を“どうこうしよう、という持っていきかたじゃなくて、下級生“から”慕われ、信頼され、目標となるような6年生となりたい、とかって視点を変えるとすらすらいくよ。」 「そうかー!!おかーさんすごい!よしそうやって書こう!」 ……「僕は、この小学校を……、……ねーこんなのヘンだよ。オレ一人で学校を変えるみたいじゃん。そんなの先生たちが話し合ってくれって感じだよねー。生徒一人がこういう学校にしたいですって発表することじたい、おかしいよ。」 醒めた視線、まともな神経だ。 「まあそうだよね。無理があるよね。つまり、どうして君が代表に選ばれたかというと、去年1年間、代表委員だったから、他の生徒よりも行事の中枢に関わっていたわけでしょう。だから他の生徒よりも、学校行事や学校全体がよく見える立場だということであんたが選ばれているんでしょう。」 「まっ、そうだな(得意顔)。」 「だったらその経験を生かして、昨年度をふりかえって良かった点や反省点を挙げたらいいんじゃない。」 「そうかー!よしそうしよう!僕は、代表委員として、1年間、行事の計画や実行を…………」 「お題についてただ答えていくだけじゃ、スローガンみたいで聞いてるほうはおもしろくないの。少しエピソードを混ぜたりすると、聞きやすくなるし心に残るのよ。」 学校の成績は人並み以下といってさしつかえない「アキタコマチ」を、よくもまあ全校生徒代表になどするものだ。 こういうのが根っからスキ、ということを、先生もよくわかっているんだな。 ぎりぎりに依頼してもどうにか仕上げてくるだろうということも。 人並み以下は言い過ぎ? だって、 「下級生からしんらいされ……おかーさん、しんらいの“しん”は“親”だよね。」 「えええっ……親じゃないよ……」 「あ、ああわかった勘違い、“新しい”だよね。」 とか言い出す子だ。 ここで怒って原稿書きを中断させ、ノートに信頼信頼信頼と3回ずつ書き取りでもさせればきっと覚えるんだろうけど、文章を考えていく苦しさと楽しさに没頭している子供にそんなことをさせるのは無粋だ。 「信頼」はまたこんど練習させよう。 「僕は“この”ことを……“その”ことを……どっちがいいかな……“その”だとひとごとみたいで冷たく聞こえるから……“この”のほうがいいな……。」 ほんの一文字が語りの印象をがらっと変えることにも、気を配るようになっていく。 子供が、言葉に対する感覚を研いでいくのを間近で感じるのは、親としてたのしい。 ゆうべ何度も、書き上げた原稿を本番のように読み、夜遅くに隣の祖父母の家まで行って読み、今朝は6時過ぎから出勤前のお父さんの前で読み、鼻をふくらませて登校していった。 先に妹の「コシヒカリ」が下校してきたから、「お兄ちゃんどうだった?」と聞いてみると、 「ん、読みまちがえてた。途中で『あ、まちがえた。』って言ってた。みんなすごいげらげら笑ってた。」 とのこと。
by apakaba
| 2006-04-06 15:08
| 子供
|
Comments(19)
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K国
at 2006-04-06 16:02
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アキタコマチ面目躍如ですね、本質的に頭が良いので中学校の3年になって本気を出せばすぐ追いつきます、本気が出なければコックか
矢吹木工でしょう 楽しい人生が送れればよし、その前に夏休みだな お盆前のクラゲが出る前においで、ウンチクがどのくらい進化したか楽しみ
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apakaba at 2006-04-06 17:19
ありがとうございます、両お師匠さんに弟子入り、楽しみにしています!
漢字、書けませんが口が達者です!
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喜楽院
at 2006-04-06 19:10
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新たに小6になった長男が、新1年生を迎える入学式で、
なにやらその全1年生を前にしてスピーチをすることになった、と 妻から聞いたのが1週間くらい前だったかな? 喜楽院「おい、悟。」 息子「なに?」 喜楽院「おめ、スピーチするんだってな。」 息子「そだよ。」 喜楽院「・・・。大したもんだ。で、なんて話するんだや?」 息子「教えない。」 喜楽院「・・・。ちょっとくらい、いいじゃん。教えてよ。」 息子「やだね。」 喜楽院「・・・。(ちったー親に相談してくれればいいのに) あのね、悟。お父さんがお前ならこう言うよ。(気を引いてる) 『1年生の皆さん、キミタチは今日から私たち6年生の奴隷です。 なんでも言うことを訊かないと痛い目に合います。いいですね? それからキミタチの家じゅうにあるお金をすべて私たち6年』」 息子「馬鹿じゃないの?」 喜楽院「・・・。」 昨日、入学式だった。 大変残念なことに、息子は私にスピーチの内容を教えては、 くれなかった。多分今夜も教えてはくれまい。
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apakaba at 2006-04-06 19:20
もう、だめだな……
うおお。
それはわくわくだねえアキタコマチくん。 床を転げ回って先生に異星人扱いされてもやはり秀でた能力ってもんは隠せませんな。ゲンキンな先生だなあとも思うがまあそれはいいとして。 本人すごいノリノリだったでしょうね。私そういうの頼まれたらすげぇはりきる〜! しかしいいなあ。文章力。子供の頃からなにかと創作モノは大好きだったけど作文とかはいまひとつで。巧い子ってのはやはり頭のいい子で本を読む数も違うし。凡人の私との歴然とした差がくやしかったわ。 で、帰ってきた本人はどんな様子でしたか?
もう6年生なんだ。月日がたつのは早いね。(笑)
確か私が会ったときは低学年だったもんな~
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apakaba at 2006-04-06 22:52
いや、床を転がってる異星人はその兄で、中3の「ササニシキ」なんです。
あいつは決して代表に選ばれないタイプです、なにしろ異星人なので。 長男はオトナから異星人扱い、次男は他人様にかわいがられるタイプです。それぞれに性格にちがいがあって、おもしろいもんですよ。 本人は、つかえたことが少し悔しかったみたいであまり多くを語りませんでしたね。文章のデキはいいと先生に言われたみたいです(そりゃー親が指導入れてるんだからさ……)。 カルロスさん、そうなの、もう6年生だよ! 大人はあまり変わった気がしないんだけどね。まあ腰が痛くなったりするくらいで…… 喜楽院さんへのレスは我ながらヒドイ、ごめんなさい。 これに懲りず仲よくしてください
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apakaba at 2006-04-07 10:10
「ササニシキ」はsuzukoさんの写真展に連れて行っていないデカイので、あとのふたりは連れて行ったので顔は覚えているでしょ。
また、赤ちゃんが生まれたらぞろぞろ引き連れていくから。 覚えてね。 はなまちさん、前を見ましょう。
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喜楽院
at 2006-04-07 17:36
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>喜楽院さんへのレスは我ながらヒドイ、ごめんなさい。
どこがヒドイって?。 一撃必殺な、ナイスなレスじゃないですか。 いいさあ~~。 >はなまち様。 いつも息子に、ああいう「変態じじい」な話をして 笑いをとってるんですけど、今回、けんもほろろで ウケませんでした。 さぞかし彼にとってプレッシャーだったのかも知れません。 今日は登校班の班長として、近所の小学生14,5人を ぞろぞろ引き連れて歩いていきました。
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apakaba at 2006-04-07 21:54
レスはですね。
キツイこと書いても大丈夫そうな相手かどうか様子を見てから、なので……口が悪いのは威勢がいいのではなく、実はゲストの方に甘えているのですよね。 喜楽院さんも息子さん進級おめでとうございます。
>喜楽院さん
いゃあ、とってもあの教育は素敵。 悪い親にどう騙されないか、子供として必死で抵抗する。 最高の教育じゃないですか。 昔は人気のあった落合信彦が、彼の親父に小遣い巻き上げられないように 必死で知恵絞ったから、その後オイルビジネスでも騙されず助かったとか。 最高の教育したようですね。 自分にも子供があったら、悪い親演じたい。
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K国
at 2006-04-08 07:41
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apakaba at 2006-04-08 19:14
K国さん、そうやって取り合いながら食べるごはんのほうがおいしいんですよ。
残して押しつけ合うようになったらかなりさびしいです。
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ぴよ
at 2006-04-09 21:43
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ココのコメント、
喜楽院さんと眞紀サンのやりとりに爆笑しちゃいましたよ! 思わず眞紀サンの日記にコメントするのを忘れそーだ(笑) 華々しい大舞台、お疲れ様でした<アキタコマチ君 緊張して読み間違えるなんて、ご愛嬌♪ご愛嬌♪ 余り完璧過ぎても、出来過ぎで嫌味でしょ(笑) でも自分の息子が学年を代表してこういう大役を任されるって、 やっぱり嬉しい事ですよね? ぴよも小学校の卒業式で(自分が卒業する時)、生徒総代で答辞しましたが、 ママは当時、かなり鼻が高かったそーですよ(笑)
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apakaba at 2006-04-10 09:09
ぴよさん、失礼きわまりないレスを許してもらえるのはありがたいことです(しかも会ったことないし)。
息子ですが、本文中にもあるとおり、なにしろ勉強では活躍できないので(でも発言だけは人並み以上にしてしまう、始末に負えない系)、先生が取り立ててくれたのはありがたい配慮だと思っています。 じつは昨年度の前半、体調を崩してずーっと学校に行けず、自信を失ってそのあとなかなか復帰できなかったんですよ。 担任の配慮を感じましたねえ。 ぴよさんは答辞でしたか!よーし、うちもそれをねらうぞー、って。
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満腹ボクサー
at 2007-05-19 12:50
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アキタコマチ君、いつのまにか元気になっているな。
>途中で『あ、まちがえた。』って言ってた。みんなすごいげらげら笑ってた。 その年で笑いがとれたら、たいしたもんだ。プロの芸人なら、笑われるのと笑わすのはちがうと言うだろうが、結果的には同じことだよ。 ビギナーズラックをいかして、いつでもどこでも笑いの取れる立派な大人になってくれたまえ。そうなったら快感だぞ。
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apakaba at 2007-05-19 22:38
力強いお言葉ありがとう。
もう、しばらくは心配なさそうです。 |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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