2006年 10月 03日
<初めて読まれる方へ> この旅行記は、私が大学卒業旅行でタイ・インド・パキスタン・ネパールを一ヶ月半まわっていたときの日記を、不定期に載せているものです。文章(註・レート換算含む)はすべて22歳当時のままです。 前回までのあらすじ パキスタンからインドのデリーまで戻ってきた私たち。つてを頼りに、タダで泊まれると信じていたホテルでは言葉が通じず、部屋は与えられなかった。 がっくりしながらニューデリーでボケボケ。 2月20日(つづき) 明朝さっそく次の目的地であるカジュラホに向けて発とう、というヒロの提案に従い、ニューデリー駅へ鉄道のチケットを予約しに行く。 明日のチケットなんて無理だろう、とダメでもともとの気持ちで行ってみたのに、意外にもすんなりと予約が取れたので、大喜び。 「よかったね、こういうこともあるのね。じゃーまたとりあえずメインバザールのあのいつもの喫茶店に行こうよ。」 「うんいいよ。」 私たちは用事を済ませるとそのまま再びメインバザールに舞い戻ってきた。そして行きつけの喫茶店に腰を下ろした。 だが私は、ヒロと向き合ってジュースを飲んでウダウダしていると、退屈というか堕落というかもの足りないというか、今すぐこの木の椅子をがたんと蹴っ飛ばして別のところへ向かいたくなるような、駆り立てられるような気分にとらわれた。 バザールをウロウロするのは飽きた。 ここ何日も、なにをするでもなくただ時を流していくだけの日々が続いている。 こんなことでいいのか、これが旅か、と問いただしたくなるような思い。 It's that!と指させるような旅のカタチなんてあるわけないけれど、とにかくもっと精力的に動き回りたいという気分になったのだ。 ヒロのことが気になった。 彼女はこの状況について、なんとも思ってないんだろうか。 観光に意識的に背を向けているのではないだろうか(だって我々はいったいこのデリーで、メインバザールとコンノートプレイス以外のどこへ行った?)。 観光するのはカッコ悪い、ガイジンみたいにこういう店で手紙や日記を書いてぐでっとしてるのがカッコいい、とでも思っているのか?あれこれ勘ぐってしまう。 この胸の焦燥を伝えたいと考えた末にやっと出てきたコトバは、しかし、 「私……、もっと観光したい。」 だけであった。 ヒロはそれだけでわかってくれた。 彼女のほうも、インドが初めての私が旅を楽しんでいるかどうかを、きっといつも気にかけていたのだろう。 「デリーをなんにも見ないで明日早々去っていくのも、いくら何でもなんだわねー。デリーってやっぱりいいとこだからね。汽車のチケット、一日延ばそうか。」 一人より二人のほうが、気を遣ったりして面倒に感じることはあるけれど、同じところに一緒にいてしくじったり笑ったり、気持ちが通じたりする良さは、一人旅では得られないよなあ、と、早速ガイドブックを取り出しながら私は思う。
by apakaba
| 2006-10-03 18:28
| 1990年の春休み
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Comments(9)
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K国
at 2006-10-03 18:39
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私も20代前半、東京、神奈川、仙台と働いたけど、観光をしなかった
今思うと悔やまれる、30数年の同じ所に行っても、同じじゃない その頃の目で見ていたかった、若い頃って観光地を馬鹿にしてるような 突っ張ってる所があって、今思うと素直じゃなかったのでしょう
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のこのこ
at 2006-10-03 21:29
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あ! スイッチ入りましたね。
うだうだーとしたい時(またはなんとなく動けない時)とバリバリ観光したい時と、波が寄せてくるように繰り返すのが長い旅の醍醐味なんじゃないかしら。 短期の旅だと駆け抜けて終わるけど。 スイッチ入るタイミングが相棒とずれるとまたつらいんだけどね。
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apakaba at 2006-10-03 23:47
K国さん、私はわりと観光はするほうです。でもせずじまいとなっても、さして後悔しないほうですね。
でもその時代に見ておきたかったという気持ちはよくわかります。 のこのこさん、当時の私は今とは性格がちがうので、けっこうカッときやすいし、相方の傷つくようなことを言ってしまったりしながら旅が進んでいきます。 今は絶対に旅先で正面衝突なんかしないだろうし、第一友だちと長旅をするというシチュエーションは二度とないような気がしている。
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ogawa
at 2006-10-04 22:05
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どんな親しい友達でも、合わないときは合わないですよね。
私も、1990年のベルリンで同じ経験をしました。 信頼している友人でも、ちょっとした事、ささいな事で行き違ってしまう。 その雰囲気が良くわかります。
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apakaba at 2006-10-04 22:29
ogawaさん、今回の分は、いつもに較べると短いのですが、わざとこの場面だけを切り取っています。
この、喫茶店の椅子に座っていたときの焦燥感は、今となってはなかなか感じることができない感覚です。 インドベテランの相方と、自由旅行さえ初心者の私。 経験に差がありすぎて、お互い「なんだかなあ」というときも、やはりあります。 その感じは香港ベテランのogawaさんと、初心者の私が同行させてもらったときとよく似ているけど、今はホラ、もう、あまりいろんなことを深く悩んだりしなくなったのでね。 私もだんだんめでたくなっていくなあ。
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ぴよ
at 2006-10-05 00:16
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言葉にしなくちゃ判ってもらえない事っていっぱいあるね。
でも、たった一言で眞紀さんの気持ちを察してくれたヒロさんだって きっと心の中では「コレで彼女は本当に楽しんでくれてるのかな?」って 不安で一杯だったんだろうと思うわ。 ぴよならこんな時、相手の気持ちも考えずにとりあえず 「初めてのインドだからもっと色々見に行きたーい!」って速攻で言いそう。 いいんだか、悪いんだか・・・うーん。
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apakaba at 2006-10-05 00:21
あーそうそう、相方も不安を感じながら進んでいるのです。
まだトラブル続出ですよ! >ぴよならこんな時、相手の気持ちも考えずにとりあえず いやー、この年になると相手にも自分にも甘くやさしくなるけど、22歳だからねえ。
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Morikon
at 2006-10-05 00:35
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皆さん同じような経験をされてるんですね、やっぱり。
私の場合、19の時の「悪友2人と夏の北海道2週間の旅」がそうでした。 どうもリズムが合わなくなって、どーでもいいことで険悪になったり。 とうとう「青函連絡船で待ち合わせ!」と決め、 最後の3日間は完全別行動、私は人生初の一人旅。 これがメチャメチャ楽しかった。 以後、友人と2泊以上の旅はしてないような気がします。
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apakaba at 2006-10-05 00:43
あー、そのときワタシも北海道にいました。(マジで)
2,3週間いたから絶対道内にいたと思う。 これに出てくる「ヒロ」ともう一人の女子と、3人でした。 そのときは妙にハイな気分で、勢いに乗って行けてしまったな。 もう一人の女子が肝の据わった女でね。それこそネエさんキャラ。 だからうまくいったんだな。 今なら、だれとでも仲良く旅できる自信がありますが…… |
アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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