2007年 04月 03日
「コシヒカリ」が読書をしないでゲームばかりしているので、ブックオフに連れて行き、児童書を安く買った。 4冊選んで買う。 娘が好きな『くまのパディントン』シリーズから1冊。 あとの3冊は私が書棚から「これどう?」と選び、娘が「ほしい!」と言ったものを。 ひとつは『ズッコケ3人組』シリーズから。 長男がまだ小学生だったころに、NHK教育テレビで連続ドラマをやっていて、子供たちも私も好きだったからだ。 もうひとつは、『世にも不幸な出来事』これはジム・キャリー主演の映画『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』の元の本だ。 ジム・キャリーのコメディー映画が大好きな娘はもちろん「読む!」と。 最後に、岩波書店のハードカバー、『ガンバの冒険』シリーズから1冊。 私は読んだことがないのだが、私の子供のころのアニメでやっていたし、娘は何年か前に小学校の学芸会で上級生が上演したのを見ていたのでこれも「読みたい!」 押しつけられたセレクトではないので、帰宅後、「コシヒカリ」はすごいスピードで読んでいた。 夜、一人でお風呂に入りながらふっと気づく。 “私の選んだ本は、どれも映像がきっかけじゃないか!” 有名なシリーズものばかりとはいえ、私自身は読んでいない。 でもちょっとしたことで、その作品にいい印象を持っていると、親も興味を惹かれるのだな。 ブックオフには、私も古本を探しに来たのだった。 少し前にカポーティの『冷血』(新訳版)を読み、おもしろかったのでカポーティを少しつづけてみようかと思い、読んだことのなかった『ティファニーで朝食を』も読もうかと思って探した。 絶対にあると思ったがなかった。 そのかわりに、ディケンズの『クリスマス・キャロル』があった。 しばらく迷ったけれど、結局買わずに店を出た。 恥ずかしいことにディケンズを1冊も読んだことがない。 本を、“読みたいと望んで読む本”と、“教養として、読む‘べき’である本”に二大別するとすれば、『クリスマス・キャロル』は私にとって後者に入る。 読んだことのない作家について議論するつもりはない。読んでいなければ論じようがないから、「まあ、読んでおこうかなあ」くらいにしか感じられないということだ。 若いころは、前者と後者の距離(温度差ともいうのか)が比較的接近していたように思う。 年を取るごとに二者の距離はどんどん離れていき、後者はいっそうプライオリティーを低められ、“とりあえず後回し”にされる。 人生の、先より過去の時間のほうが長くなってくると、より快楽的・享楽的な読書傾向へ走るものなのだろうか?(私だけ?) 「先は短いし、我慢して読む時間ないもん。好きな本を先に読むのよ。」 けれども、最近、映画とか本を目にするにつけ、「知らないよりも、知っているっていいことだなあ。大切なことだなあ。」と思うことがよくある。 ゆうべ、『トゥモロー・ワールド』をDVDで観ていて、主人公のクライブ・オーウェンがパブに入り、ビールを飲んでいるシーンにパブタオルが映っているのを見て、「ああこれ知ってる。イギリスにしかないんだよね。さすがロンドンが舞台の話っぽい雰囲気が出てるなあ」と思っていた。 パブタオルのことはお友だちのブログを読んで知ったのだった。 また、クライブ・オーウェンが関わっていく過激派組織のメンバーに“トマシュ”と呼ばれている男がいて、「ん、トマ‘シュ’?ははーん、こいつはポーランド系か」と思っていた。 ちょうど今読んでいる小説に、“ナントカシュ、カントカシュ”とやたら“シュ”が多く出てきて、それはポーランドがルーツであるということをなんとなく覚えていたからだ。 こんなふうに、わずかでも知識があると、映画を観るとき、本を読むときに鑑賞の深さが変わる。 そして、その小説の後半にモチーフとして多用されていたのが『クリスマス・キャロル』だったのである。 『クリスマス・キャロル』をふまえて、話が進む。 読者は一人残らず『クリスマス・キャロル』を読んでいるのが前提、であるかのように。 これはやはり、読まないといけないのではないか。 現代英米文学を好んで読む人間がディケンズの一つも読んでいないというのは、あまりに教養不足では、ないのか? そう思って、今日も一応、中古の文庫本を手に取ったのだった(棚に戻しちゃったけど)。 白状するが、私は『クリスマス・キャロル』と聞くと、たちまち映像と音楽が頭にエコーするのである。 ディズニーアニメ、『ミッキーのクリスマス・キャロル』なのだ! 「ササニシキ」が幼稚園児のころ、彼はこの話をとても好きで、近所のつぶれかけたレンタルビデオ屋でくり返し借りていたのだ。 憎々しい、頑固な守銭奴のスクルージさんはドナルド・ダック。 今日も、ブックオフでディケンズの小説をぱらぱらめくってみても、あのドナルドの顔と声がまず浮かんでしまう。 「コシヒカリ」に買った本のセレクトも併せて、映像と記憶との因果の深さを思い知ってしまう。 まあ、でも近い将来には読むと思う。 『クリスマス・キャロル』も『ティファニーで朝食を』も。 アタマの中で、スクルージさんがドナルドのだみ声でも、『ティファニー〜』を読んでいるあいだじゅう、ひっきりなしに『ムーン・リバー』が流れることになっても。 「教養として、読んでおくべきだろう?」という気持ちが強くなる周期というのもあるのだ、それをのがさず捉えよう。
by apakaba
| 2007-04-03 23:14
| 文芸・文学・言語
|
Comments(4)
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ogawa
at 2007-04-03 23:37
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ディケンズのクリスマス・キャロルは私も教養として読みましたよ。
えらい懐かしい本ですね。 「ガンバの冒険」は見たなぁ・・・ネズミとイタチだっけ。 親の読んだ本が子供が読むというのは良くわかります。 娘はシャーロック・ホームズやルパン、冒険小説は読破 しています・・・私の本棚から勝手にもって行ってます。 やっぱり親の読む本は影響与えますよね。 どうであれ一冊の本を読むと、何かのキッカケで 「そうそう、あの時読んだ本でこう書いてあった。」 と思いだしますよね・・・ウン
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apakaba at 2007-04-03 23:56
たらたら記事におつきあいいただいてどうも。
ogawaさんもひそかに登場させているけど名前を出すと流れの上でいかにも浮くので、お友だちということでひとつよろしくお願いします。 ogawaさんは、読みたい本と読むべき本の温度差が開くことはありませんか。 私はどうも、「後回し本」が増える一方です。 でも傾向が固まるのはよくないって思っています。 ミーハー魂はいつまでも忘れずにいたいです。 やはり、自覚しないところでも、親は子供に影響を与えるものです。 娘がジム・キャリーが好きなのも、私が好きだからだしー。コメディー見て、涙流して笑ってるしー。 コドモは親の背中を見て、そして書架を見て育つんだぜ。
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ぴよ
at 2007-04-04 16:21
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読むべき本が沢山あるのは知ってるけど、ずーっと「読みたい本」ばっかりだよ。
ぴよは読みたい本と読むべき本のギャップが相当激しいタイプだと思う。 最近なんてミステリー中心の娯楽本しか読まないもん。 海外文学・純文学が好きだったのは学生時代かな。 確かに昔は読みたい本と読むべき本がシンクロしてましたわ。ナルホド・・・ ちなみに「ガンバの冒険」の原作本は中学生の頃に読みました。 「ハイジ」「海底2万マイル」「十五少年漂流記」等、小学生の頃に読んで おいて当然の著書を読み倒したのは全て中学時代。知能指数低いな(涙)
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apakaba at 2007-04-05 00:18
ミステリーは疲れているときに読んでいたけど、ここ数年はほとんど読まない……疲れなくなったのかなあ。
肉体の疲れているときって、小難しい本とか名作って重たくて入らないでしょ。 >確かに昔は読みたい本と読むべき本がシンクロしてましたわ。ナルホド・・・ そうなのよ。「へえ、これも読んでみるか」「ま、有名だし。」とか、わりと気楽に大長編とかも手に取っていたでしょ。 やっぱ本能的に「老い先短いぞ。好きなものを先回しにしろ」って感じているのかしらー! |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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