2007年 06月 26日
某掲示板で、源氏物語などの古典文学を読むことについての話題が出ていた。 私は、どうせ読むのなら、原文を読むべきではないかということを書き込んだ。 どんな古文でも原文を現代文と同じようにすらすら読めるということなど、現役の国語教師でも困難である。 私もたまに古文を読むが、完全現代語訳つきはさすがに必要ないにせよ(国文科卒なので)、部分的に注釈のついているもので読む。 私の書き込みの言葉が足りなかったせいで、どうも私が古いものこそ素晴らしい(古いからこそ素晴らしい)と思いこんでいると受け取られたようである。 そういうことを言いたかったのではなかった。 私が古文を読む理由は一つだ。 古文を読むことは、“自分を知ること”だからだ。 1000年以上も昔の言葉と、今の自分が使っている言葉の意味が、同じであればその言葉が年月を超えてきたことに驚嘆する。 時代ごとに文体や言葉の用法がだんだんと変遷していくのもおもしろい。 万葉集や古事記のころの文章や歌と、平安時代のそれと、平家物語以降、リズムが新たに成立したり、崩れたりといったこと。 今、こうして毎日日本語を話し、日本語で思考し、日本語で文章を書く自分との連綿としたつながり/途絶。 そういうことを知っていくと、心が弾む。 弾まないですか? 私は弾むんです。 言葉、とか、文章、というものが好き。 単純に、それだけのことだ。 この前、『土左日記』を読んだ。 旅行記として、そうとうに楽しんだ。 紀貫之一行のアル中っぷりにもあきれたし、いつまでもだ〜らだ〜らとしていてなかなか本格的な旅に出られず、たびたび沈没(船旅で沈没という言葉はだめか。バックパッカー用語で、一箇所からなかなか抜け出せないこと。)している一行に、「何日経ってるんだー。早く行けー」と、発破をかけたくなったり。 古今集の編者である貫之だから、歌の巧妙さは当たり前としても、1000年昔の旅行記がこんなに先へ先へと読ませる作品だとは知らなかったし、話をドラマティックにしようとひそかに奮闘する貫之のストーリーテリングぶりを愉快に感じることになるとは思ってもみなかった。 これほど愉楽を与えてくれる本が、昔の、同じ日本人の手になると考えるとうれしくて、幸せを感じる。 古文を読んでみるのは、そんなに大それたことでも風変わりなことでもない。 もし、古文の知識に自信がなければ完全現代語訳つきの本を読めばいいと思う。 ただし、必ず原文とつきあわせて読んでもらいたい。 原文を読まずに現代語だけ読むのはやめよう。 日本人だったら、原文を。
by apakaba
| 2007-06-26 21:26
| 文芸・文学・言語
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Comments(25)
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はなまち
at 2007-06-26 23:29
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すきものと名にし立てれば見る人の折らで過ぐるはあらじとぞ思ふ
特に意味なし。
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なるほど。これは僕に読めっていうことだね。
師匠の芭蕉様の本もいつかは読まねば・・と思ってます。 っていうか国内紀行も読まねば。 原文かぁ。ちと辛いなぁ。 日本のこの時代は有名無名かかわらず、多くの紀行があるそうです。 でもいいかも。読んでみるかぁ。amazonで売っているのかなぁ
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apakaba at 2007-06-27 07:58
古文レス。
はなまちさん、どなたか、お若い女性に。どーぞ。 soraさん、え!おくの細道は未読ですか! あれはほんっとにおもしろいです。 昔のニッポンは、現代の海外旅行なんか比べものにならないほど、エキサイティングでアドベンチャーだったことでしょうね。 「土左日記」は、とっても短い話なのです。 文庫本でも、字もデカイし。 船旅の閉塞感とか不便な感じとかがよく出ていて、いっしょにグッタリできます。
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ぴよ
at 2007-06-27 09:17
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はなまちさん、なーに書いてんだか(笑)
古文、学生時代好きだったけど・・・原文だけではとてもムリ ぴよは本が二段になってて上段が原文、下段が現代語訳という読本でしか読んだ事がないわ。 でもそれでも面白いよ。原文読んで現代語訳と照らし合わせると言葉の意味が今では全く逆になってる単語とか結構あるじゃない? いつの間にこの言葉は意味が逆になったんだろう?どうして逆の意味になったんだろう?と思って、更にその語源と語訳の変遷を辿ってみるのがまた楽しいんですよ。 日本語って面白いなぁ!って古文読むと再発見出来るネ
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apakaba at 2007-06-27 09:20
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apakaba at 2007-06-27 09:21
いやーん手折ってしばらくするとドライフラワーになっちゃうー(最近、本当に連投が多い。老化の証)
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kajikko
at 2007-06-27 12:03
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最近、古文読んでないんで、えらそうなこと言えませんが、平家物語がお薦めかもしれませんね。ストーリーテーリング抜群だし、誰もが覚えている冒頭の文のように、古文にしては読みやすい文だし。
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はなまち
at 2007-06-27 12:51
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apakaba at 2007-06-27 14:38
古文へ。
kajikkoさん、そうだね。平家物語はいいねえー。 音読向き、当たり前だけど。 文のみやびさは平安期よりだいぶ落ちるけど、リズム感がいいし、滅びまくるところが。なんとも。 私の好きな「旅宿花」も入っているし(忠度最期)。 はなまちさん、道長みたいにぺらぺらぺらぺらと。 口先でするする〜っと。
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はなまち
at 2007-06-27 17:44
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某たび氏みたいですなぁ。ひそひそ。
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apakaba at 2007-06-27 19:42
シャイでイケルのは若いうちだけ、あとは言ったモン勝ちが一人勝ち。
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はなまち
at 2007-06-27 23:31
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で、折る、ありおりはべり。
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apakaba at 2007-06-27 23:46
いまそかり。
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ぴよ
at 2007-06-28 01:36
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apakaba at 2007-06-28 09:08
呪文のような古典文法用語を、とうとう長男が覚え始めました。
こっちが年とるわけだー。 こきくくるくれこよ。とか必死で言っています。 古文はなまめかしいお話が、いっぱいあるもの。 歌でのナンパぶりもすごいし。 そこでもやっぱり口(歌)の上手い男が勝っていくわけだなあ。
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はなまち
at 2007-06-28 11:14
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なのらせそらみつ・・・おしなべて・・・・
ですかなぁ、スケールでかい。
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apakaba at 2007-06-28 11:23
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はなまち
at 2007-06-28 15:04
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ユーロ高でお金持ちになったフランス人の財布をあてに、乞食営業が出来るようフランス語レッスン受けています。
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apakaba at 2007-06-28 15:32
おきばりやす。
ヨーロッパ製品が軒並み値上がりして、バッグだのなんだの、今から買うのはすっかり難しくなってしまいました。
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はなまち
at 2007-06-29 12:32
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お金ねぇ、たびちゃん師匠に師事しておりますが、様々なテクニックはあるようですが、それ以前に大きな哲学が必要なようです。
悪魔に魂を売り渡したようなやり方だといずれ破綻します。 テクニックばかり真似ても・・・・・ 雄略さんの正統継承者はどう見てもあまり幸せそうじゃないし・・・・
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apakaba at 2007-06-29 13:09
お金儲けにもというかお金儲けこそ、その人の性格がすごく反映されるんでしょうね。
はなまちさんとたびちゃんでは性格がちがうんだから、テクニックだけ同じようにしても、いずれは自然と変わっていくのでしょう。 継承者はねえ、んー。 ずいぶんいろいろ報道されていますがごく一部だろうし。
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満腹ボクサー
at 2007-10-20 12:37
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>この前、『土左日記』を読んだ。
旅行記として、そうとうに楽しんだ。 >これほど愉楽を与えてくれる本が、昔の、同じ日本人の手になると考えるとうれしくて、幸せを感じる。 学生時代に読んだ古文なんて、もう全部忘れちゃった。それなりに面白かったような気がするけど、あぱかばブログのほうがはるかに面白いんじゃないかな? 人によるけど、古文をありがたがる気持ちには、古文だからありがたがっているだけで、内容を本当に面白いと思っているのか疑わしい場合もあると思う。昔のひとが書いた内容をそのまま現代に置き換えて、現代文にしたら、どれだけの人がありがたがるかな? おれとしては、あぱかばブログが古典になる日を楽しみにしていますって、その日が来るのを確かめようがないけどね。
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apakaba at 2007-10-22 15:33
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ちえみ
at 2017-10-26 10:54
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apakaba at 2017-10-28 22:31
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アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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