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あぱかば・ブログ篇

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2005年 02月 18日

「恋人までの距離《ディスタンス》」までのディスタンス

10年ほど前の作品だが、お友達からの推薦が偶然に続いたので、やっと見てみた。

アメリカ人の男と、フランス人の女の一日限りのラブストーリーだ。
ヨーロッパ旅行中に列車内で知り合って意気投合し、ウイーンで途中下車して街を一晩中歩く。
身近なことや観念的なこと、あらゆる話題を延々としゃべりつづけながら。
翌朝には、それぞれの帰途へ着くため、わかれていく。
ちょうど半年後、同じこの駅でまた会おう、と約束だけして、住所も電話番号も教えあわないまま。
このラストを見ていた観客のだれもが、
「おそらく、半年後にあの二人は再会しないだろう」
と、感じる——。

この話の続編映画「ビフォア・サンセット」が、ちょうどいま、恵比寿ガーデンシネマで公開されている。
あの日の半年後、観客の予想どおりに再会ができないまま、9年の歳月が流れ、パリでまた偶然再会し、また限られた時間を二人きりで過ごす、という話らしい。

主演の二人、イーサン・ホークとジュリー・デルピーが、とにかくうまい、うますぎる。
互いに惹かれていく気持ちを抱きながら、ひっきりなしにしゃべりつつ散策を続けるなんて、これほど難しい演技はないと思うのだが、見事に自然、しかも二人とも、思わず手を伸ばして触れてみたくなるほど魅力的だ。
路面電車の車内で、停留所いくつぶんなのか、ものすごい長回しのシーンがあり、その間の二人の自然さには圧倒された。
自然さに圧倒されるなんて変な表現だが、あの長いテイクを一度で撮りきるとは、監督も、役者によほどの信頼を置いていたのだろう。
旅先のつかの間の恋、といってしまうと身も蓋もないが、なにか「ああ、こういうことって、あるよね」と納得されられてしまうのは、ひとえに二人の演技力のおかげだと思う。

別れが近づいていく夜明け前、公園の芝生に横たわり、抱き合ったところでシーンが切れ、次の場面ではもう空が明るくなり、二人は街角を歩いている。
……あのあと、(セックスを)したのか?……
と、掲示板でのお友達が話題をくれた。
したのか、しないままだったのか、はっきり描かれていないところがとても官能的なシーンだった、とその人は語っていた(まあ、女性の着衣が変わっているので、ふつうに考えればしたという流れだろう)。

なので私も終わり間際のその重要なシーンに期待&注目して見始めた……のだが。
ん〜、してもしなくても、極端にいえば、おなじこと、ではないかなと。

ああやって、知り合ってからの時間がわずかしかなくても、そのあとの人生に決定的な余韻をもたらす(であろう)恋の相手に、「あ。」っと突然めぐり会ってしまうことって、ま、あるんですよね。
そういう相手にめぐり会うことはごくまれにしかない、けれども、彼らは最初に目が合ったときから、お互いがその相手だと感じとっていた。
初めて手をつないだり、初めてキスをしたり、腕を組んで歩いたり、たしかに「知り合って、まだ数時間しかたってないのに?」と思えば接近が速すぎるのだけれど、もう出会った瞬間から結ばれていたのだから、体の接近は心の結び合いをあとからなぞるだけの、“必然的なトレース”だ。
「近づいていく」のではなく、すでに「近かった」。
だから(セックスを)してもしなくても大差はないとも思えるし、言うなれば二度結ばれていくのを見せられるのだからよけいに官能的とも見える。

だとすれば、別れのときが来て「半年後に、この駅のホームで!」とあんなに必死で約束をかわしても、会えないだろうなという予想は、簡単に立つ。
なぜなら、あの二人は“会っても会わなくても、おなじだから”だ。
出会った瞬間にもう完成しているカタチに、半年後の再会など入る余地も意味もない。
一日限りで数年分の恋をいっぺんに味わってしまったら、心にそれが完璧なカタチとして位置を占めるだろう。
だからもう、いいんじゃない?
そんなふうに、観ている方には思えるからだ。

それだけに、半年後ではなく、9年後の再会という設定には興味が湧く。
どうして今になって、再会する映画を作ったのか、意図を知りたい。
これをハズしたら、本作の価値まで落ちるにちがいない。
新作では、さらにふたりきりの時間は少なく、ふたりきりの闇夜もなく、真っ昼間の85分間だけらしい。
どうやって「恋人までの距離《ディスタンス》」までのディスタンスを埋めるのか、埋めないままでまたわかれるのか、気になる気になる!

by apakaba | 2005-02-18 23:02 | 映画 | Comments(6)
Commented by のこのこ at 2005-02-19 13:01 x
へぇぇぇ。
恋愛映画は苦手なんですが(せかちゅーは観に行ったけど・笑)
観てみたくなりますネェ。
出会った瞬間から結ばれているの。。。

あの~、ココに書くのもなんですが、あの眞紀さんのインドの旅行記、そういう官能的なモノを感じたんですよ。
実際は全然親密じゃないのに親密な・・・。 狙って書いてて文章が上手いからほんのり香るような演出なのか、それとも・・・いや、いくら文章上手だからっていってもああいうもの狙ってはなかなか出てこないよねぇ・・・。とか。読み終わって唸っちゃったよ。
二人のディスタンスがね。ふわ~っとね、感じられるのよ。だからイイのよ。いや、マジに。
Commented by ogawa at 2005-02-19 16:11 x
この1週間自宅で殆どPCを触っていなかったので、眞紀さんのやけどのことは知っていましたが、お見舞いもせず失礼しました。
もう日常生活には差し支えはありませんか?
とコメントのはずがご挨拶になってしまいスミマセン。

あまり恋愛映画は見ないので寡聞にしてこの映画のことは知りませんでした。
眞紀さんは気がついていないかもしれませんが、この映画の評論(感想?)は私のように全く知らない者に「見たい」と思わせる「力」があります。
これからレンタルビデオ屋に捜しにいきましょう(^^)
Commented by 三谷眞紀 at 2005-02-19 23:48 x
ogawaさん>いやーどうもお恥ずかしい失敗です@やけど。
けっこう皮がむけてきちゃったのですが、まだ新しい皮膚がちゃんとできていなくて、結局真っ赤になってひりひりのままです。まだ薄い手袋&ゴム手袋なしでは暮らせません。
べつにいまからヨメに行くわけでもないんだけど、やっぱり落ち込みますね。「ずっと、あとが残るのかなあ」と。
さて、ogawaさんの年でヒマヒマだったらもちろんそれも悲しいけれど、お忙しいのがつづいて心配ですねえ。
倒れないでくださいよ!そんでまた飲みましょうね!

あ、あの、映画評は読んだ方が「へー、見てみようかな」と思っていただいてナンボなので、どうしても無性に気合いが……おもしろくなかったらゴメンナサイ。「ふたりがしゃべってばっかりで、全然おもしろくない」という感想の人も多いんです。
私は役者の演技が達者だと、なんでもナイス!と思ってしまうタイプなので、はは。
Commented by 三谷眞紀 at 2005-02-20 00:11 x
のこのこさん>私のインド旅行記をラブものの一種として見ると、この映画にシチュエーションが似てきてしまうんだけど(もちろん全然親しくなってないし明け方の着衣も変わってませんが)、現実はそうドラマチックには運びませんよね。
だから映画があるんだねえ。うんうん。
しかし、ずーっと旅行記の感想を待ちぼうけしてたので、こんなトコで感想もらえてうれしいです。ありがとうございます。
Commented by 満腹ボクサー at 2007-02-16 12:44 x
>知り合ってからの時間がわずかしかなくても、そのあとの人生に決定的な余韻をもたらす(であろう)恋の相手に、「あ。」っと突然めぐり会ってしまうことって、ま、あるんですよね。

たしかに。私がボクサーになったのも歌を作るようになったのも、恋をしてしまったせいです。(なお、今回の話は学生時代の眞紀さんの友達とは関係ありません。念のため。)
Commented by apakaba at 2007-02-16 12:50
こ、恋!!!!!!!嗚呼……


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