2008年 01月 18日
本のBest10があと3点なのに、ややクタビレ気味で。明日にはちゃんと。 きのう、阪神淡路大震災が起きてから13年目の日だった。 いろいろな場で、きのうはその話題が出ていた。 私は東京に住んでいて、親や親戚もほとんど東京とその近辺に住んでいる。 関西に、今でこそ友人もいるが近しい縁者はひとりも住んでいない。 関西の人たちが、13年たっても涙し、黙祷を捧げる日、私はなんにもしない。 そう、なんにもしないのよ。 ごめんなさい。 でも、ひとりでにそういう行為ができるようにならなければ、それは偽善だと思うので。私にはそこまでわき上がる感情は正直に言って持てないので。 同時に、関西の人たちが「震災」の話題をするときのあの、一種の連帯感というか……ものすごく厳粛な感じ、あれがどうやっても我がこととしては感じられない。 彼らと相対するとき、名状しがたい居心地の悪さを覚えざるを得ない。 本当の“部外者”など、地震国のこの国にいるはずがないのに、居場所のなさが言葉を封じる。 大きな体験を経験した人への羨望の思いか? そんな羨望、持ってどうする? きっと、近い将来、関西に負けないくらいのすごい地震が来て、東京は壊滅するからね。 首都の壊滅で、日本は大混乱。 私や家族も全員無事ではいないでしょう。 そうすればわかるから、あなたたちの厳粛な気持ちはわかるようになるから。 それまで、少し待っていてください。 ただの自虐だ。 きっと、そんなこと思っても、被災者は喜ばないし、感情を害するだけにちがいない。 これを読んだ人、嫌な気分になったでしょう。 私だってこんなこと思いたくないし書きたくもない。 しかし、この成り代われなさのもどかしさは、まちがった方向に転がっていくとこんな思考に陥ってしまう。 2年前、神戸のメリケンパークへ行って、震災のことがありありと浮かんだという話を書いた。 それに関するコメントで、「部外者があとから来てわかった気になるのは偽善だと思う」という意見をいただいた(神戸の話のつづき。)。 この“偽善の感覚”は、それ以来ずっと心に残っている。 でも、大きな物事には、必ず無限のレベルでの“部外者”と“当事者”がいる。 震災当事者にしても、うちは無事だったけどあのお宅は家族ひとり亡くなった。 あのお宅はおうちが半壊。うちは全壊。 国からの援助のお金は、うちはこれだけなのにあそこの金額は。などなど。 それこそ文字通りの“部外者”は、「みーんな大変で、カワイソウな人たち」と乱暴にくくって、同情をかけようとするが、“当事者”の間にもさまざまな嫉妬や憎悪、諍いも争いもあっただろう。 そして、日本各地の震災被害地の人の、「阪神淡路ばかりクローズアップされて。こっちだって悲惨だったのに。」という気分も、耳に入らないだけで絶対にあったと思う。 もちろん、その逆に、日常では思いもしなかったやさしさや人の温かさを知ることもできたのだろう。 “当事者”のブログで、東京の本社の人間が「神戸のお客さんにお見舞いの挨拶周りに行きたい」と言ってきて、「そんな脳天気なことをやれる状態ではない」と返した——というエピソードを読んだ。 私には、その“東京の人間”が気の毒に思えてしまう。 “当事者”のすさまじい状況からすれば、たしかに脳天気な申し出なのだろうが、テレビの報道でしか想像しようのない立場の“部外者”にとって、お見舞いしようというのはせいいっぱいの誠意だったはずだ。 私なら、どうしただろう。 私が“部外者”たる“東京の人間”だったら、また“当事者”だったら……思いやりの行く先が迷走する。 地震さえなければこんな言い合いする必要もなかったのに、成り代わることができないことで言葉のぶつけ合いも生じる。 地震が人と人の関係も揺らすんだ。 人の振幅を大きくする。 私は偽善の感覚に苦しみ、自虐に落ち、愛する人を失いたくないと心から思い、そして今年も黙祷をしないで一日を終えてしまう。
by apakaba
| 2008-01-18 17:59
| ニュース・評論
|
Comments(18)
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ogawa
at 2008-01-18 21:19
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眞紀さんの考えはそれで良いと思うよ。
御巣鷹山のジャンボ機墜落、スマトラ島沖地震など「その日」には必ずニュースが流れます。 そして気づくのです・・・「ああ、今日はそういう日なんだ」 たしかに大きな災害や事件に巻き込まれて亡くなられた方は気の毒だと思います。 幸いにも、友人も知人も肉親も被害を受けずに済んだ人にとっては、一つの事件としての記憶ではないでしょうか。 不幸にして、それぞれの事件の被災者、被害者になってしまった人達にとっては語り継いでいくことになっていきます。 阪神淡路大震災は神戸を中心にあまりにも関わってしまった人が多かったからなおのことですよ。 >愛する人を失いたくないと心から思い それを考えることができるだけでも価値があると思いますよ。
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apakaba at 2008-01-18 23:04
私が1年で一番「関西」を遠くに感じる日です。
あの粛々とした連帯感、のような感じに、いたたまれなさを覚えます。 東京が壊滅するまで待ってて、なんて非道です。 たぶん、これを読んだたくさんの人が不快になったと思う。 でもそういう、絶対にまちがっている心の暴走というのはあるものだ。 >それを考えることができるだけでも価値があると思いますよ。 自分以外にあと4人、ちゃんと助かるのかなあ? よく、離ればなれになったらどうするかという問題については話し合っていますがね。 死ぬなら私がいいなあ。
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のこのこ
at 2008-01-18 23:30
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>地震が人と人の関係も揺らすんだ。 人の振幅を大きくする。私は偽善の感覚に苦しみ・・・
結局こういうことを考えることがひとつの価値なんじゃないのかなぁ。 ワタシは震災のとき、起きている時間のほとんどすべては仕事ばっかりしてて、テレビでの映像もかろうじて毎日一瞬見るだけだったから。 大阪に住んでいた親友が一年後ぐらいに会ったときに関西人にとっての震災の話をきいて、「そういえばこの子も大阪だった」と。 まさに忙しさは心を亡くすのいい例でした。 世の中には当時の私のように想像することすらしない・できない人だってたくさんいるわけですからね。 私にとって、13年後の今のほうがよっぽど響くわ。
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k国
at 2008-01-19 07:44
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どんな災害でも、不公平です。私が小学5年の時、大水害があって
35人亡くなりました。我が家は軒先まで水に浸かって商売道具は壊滅でしたが、道路の向かいの一段上の家は無傷でした。 同級生は家ごと流されて九死に一生を得ましたが、家は無くなった。 生きてただけで良かった、家があっただけで良かった、あれだけの水害で何も被害が無くてよかった。 被害者のレベルで違ってくる、マスコミはドラマ性のある話題を中心に報道する、お涙頂戴的に。 神戸の時は朝テレビのニュースでビックリした,名神の高速道路の 橋脚が倒れてる、淡路に住んでいて神戸にはよく遊びに行って見慣れた風景が、ゴジラが通った後みたいになっていた。 弟が淡路に住んでいたので気になったけど、朝大丈夫の電話が一回あったっきりで連絡がつかなかった。 奥方の実家は神戸の奥の三木市、ここも連絡がつかなかった。 幸いどちらも、被害は無かったけど地震の揺れを実際に経験した 人同士の話には聞くしかない。
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apakaba at 2008-01-19 11:48
地震。
のこのこさん、大きな事件や事故のとき、ちょうど海外にいたりすると、本当に遠いできごとのような感じがしますよねー。 阪神淡路のときはそれなりにびっくりしたけど誰かの安否を気遣うということもほとんどなかったし。 でも、9.11はたまたまテレビつけていて、怒りで泣いた。 阪神では涙も出なくて、9.11では涙が出るとか、不思議なものだな。 K国さん、水の被害はほんとに何メートル、何センチが明暗を分けますよね。 東京の災害のなさは不気味です。 いつかドーンと、って思うと。
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Kay
at 2008-01-19 19:03
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地震を知ったのは、香港で出勤前のBBCで「神戸に大地震」の見出しでした。。一瞬ボーっとして、何も考え付かず、神戸の実家に電話を入れても話中のツーツーと言う音のみ。まずは家にいても情報が限られるというので会社に出た。日系の証券会社でしたから、大スクリーンで同時中継してました。支店長の鶴の一声で神戸に肉親のいるものは国際電話ファックス何でも使い放題で肉親の安否を確認しろといわれ、学友から親戚すべてに掛け捲りました。結局両親の安全を確認できたのが次の日の夜でした。大学時代の旧友が私の気持ちを思って道なき道を逆走したりガラスの破片だらけのところを走ったりして探し出してくれました。10階建てのマンションは全壊、その後は両親も気力をそがれたようでした。同じ関西でも地震のとき、大阪梅田で西か東に行く人が人目でわかるようなギャップがありました。神戸方面に向かう人はスニーカーにポリタンク(水)抱えてました。東方面はみんな格好のいいブーツやヒールでした。今でもあの高速の橋脚のばたばた倒れた様子をみて吐き気が止まらなかった気分を思い出します。13年たって、母は認知症が進みあの頃のつらさもわからなくなっています。
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at 2008-01-20 12:23
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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apakaba at 2008-01-20 16:32
地震。
Kayさん、大変な思いをされたのですね。 お母様たちも苦しかったのはもちろんですが、Kayさんも遠くにいて駆けつけられないもどかしさもあったでしょう。 カギコメの方、私も、同じ震災といっても阪神淡路ばかりが記憶に残って北海道や新潟や、いろんな他の地域の被災者は実は羨ましいとか……そういう感情ってあるだろうなあと思います。 しかしつらい体験をなさったのですね。 皆さんいろいろつらいことを乗り越えているんだなあ……!
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喜楽院
at 2008-01-20 19:38
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阪神大震災。
あの日、いつも通り、長野駅前の職場へ出勤しました。 一日中、キャンセルの電話を受けまくりました。 電話一本取るたびに100万円単位で 予約が消滅しました。 私一人で、あの日一日で、何千万円のキャンセルを 受けたことでしょう。
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はなまち
at 2008-01-20 19:58
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自分自身については、まあほとんど被害はなかった。
ただ、出勤できなくなったので、自家用車持ち出したら悲惨な渋滞。公衆電話はどこにかけても話し中状態でした。 週末に神戸入ったが、大変だった。 義援金集めたら130万円ぐらい集まってしまいどうするか悩んだ。
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apakaba at 2008-01-20 22:30
喜楽院さんはなまちさん、それぞれに大変だったのですね……なにか、それぞれがちがう形で関わって、あの日とその後を迎えたのかと思うと、今がとても不思議な感じがします。
東京大震災になったら私の安否もオモヒ出してね!(けっこう、マジで)
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那由他
at 2008-01-21 09:00
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私も直接、阪神淡路大震災の被害を受けたものではありません。
関西に住んでいる人でも、その地域によって、かなり体験の内容が違うでしょう。 震災一週間後くらいだったか、車に乗ってるとき、ローカルのラジオを聴いていたら、パーソナリティ(っていまでも言うのかな)の男性が、「震災の日、たまたま仕事で家を空けていた。その後、避難所とかで家族と一緒に震災後の大変な時期を過ごしたのに、嫁からは、『あなたは、あの日の揺れを実際には体験してないから。』と言われる。」と言っておられました。
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那由他
at 2008-01-21 09:00
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人って、自分の体験や思いを共有したいという願いと、経験はその人固有のもので、完全に共有できないという悟りみたいなものの狭間で、揺れてるんだろうなぁと思います。
簡単には「あなたの気持ちがわかる。」とは言えないけど、「わかるのは無理でも、想像力を駆使して、わかろうと努力してる」「あなたの気持ちに寄り添いたいと思ってる」とは言えるのではないかと思います。 災害でも、身内の人の死でも、病気でも、さまざまな苦難にある人に対して、何か助けになることをしたいという気持ちが起こっても、それを相手から否定されるのも、それはそれとして受け止める他ないと思ってます。 相手の受け取り方は、人それぞれでわからないので、自分がしてほしいことを、相手にもする、を基準に考えるのでいいのでは、と開き直ってます。 そして、他の人のことは置いておいて、自分の行為や思いは、もしかしたら、自己満足かもしれないと、自分を省みることは忘れてはならないと思ってます。
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apakaba at 2008-01-21 15:21
那由他さん、娘がキリスト教会系幼稚園のとき、「ひとにしてもらいたいと思うことを、ひとにもしなさい。」という言葉をしょっちゅう唱えて(唱えてっていうのはヘンか)きましたね。
そういうことなんでしょうね。
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那由他
at 2008-01-21 17:36
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コシヒカリちゃんが唱えていた(?)のは、マタイによる福音書7:12 の「それで、何事でも、自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい。これが律法であり預言者です。」かしら。
孔子が、「己の欲せざる所は、人に施す勿れ」といってるのと比べると面白いですね。 どっちがいいとか悪いとか、わかりませんが、結局、相手の立場に立って、とか、自分に置き換えて、ということでしょうか。
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apakaba at 2008-01-21 19:41
そうです、マタイによる福音書(番号などワカランのですが)でしたね。
子供向けの言葉に直してあると、ますます素朴で率直になっていいですよね。 私も、孔子の言葉と対を成すなあと興味深く思った覚えがありますよ。
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はなまち
at 2008-01-22 22:50
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Treat others as you want them to treat you.This is what the Law and Prophets are all about.
Do for others what you want them to do for you:this is the meaning of the Law of moses and of the teachings of prophets. マチューのgood news
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apakaba at 2008-01-22 23:14
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アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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