2008年 03月 10日
先月のことになってしまいましたが。 「アキタコマチ」の写真展に合わせて京都へ行き、夫と駆け足で京都・大阪の安藤建築をまわりました。 ↑ まずは大阪、茨木の光の教会。 前回行ったときのことは光の教会——“イメージ”を獲得するための結晶としてという記事を書きました。 前回の記事では暗さを強調した写真でしたが、今回はカメラの調整で明るめに。 雰囲気変わるでしょう。 見る者の気分や体調や、いろんな物事をそのまま映し出す建物です。 それが、“教会”の使命というふうにも思えます。 夫は、GR DIGITAL2を買ったのがうれしくて、露出を変えてこの光の十字架だけで50カット以上撮り続けていました。 写真を撮らない私には意味不明の行動。 「縦の構図にすると、(十字架の)縦が強調されて、スクエアや横長の構図にすると横の線が強調されて見えてくるんだよ。視覚の効果で……おもしれえよなあ!」 できあがったカットを見せてそう言われるまで、なにもわかりませんでした。 そういうことを、較べるのね。 ↑ スクエアモードに凝っているらしい。 暗い礼拝堂と打って変わって、教会ホール部分はさんさんと陽が差す。 二つの建物の、表情の差が素敵です。 今回は、日曜礼拝のあと、牧師さんが建築ファンの見学者相手に、安藤さんと丁々発止ながらも理想の教会をつくるべく力を合わせて邁進していったエピソードをユーモアたっぷりに語ってくれ、それがなによりの思い出になりました。 夫の感想・・・「安藤さんはもちろんすごいけど、あの牧師さんも、やっぱりすげえんだよ。安藤さんと渡り合ってきたんだから。この地元の信者さんたちもすげえんだよなー。人がいて建物が生きてる場所だよなあ。」 コンクリートの不思議な建物の中は、温かい人の声(と、なぜかゆでてあったうどんの匂い)に満ちていましたねえ。 ↑ つづいて、大阪と京都の境あたりにある大山崎山荘。 この建物がなんなのかについての解説は、サイトをお調べください。 奥にそびえる本館は、個人の家とは信じがたいようなリッチな洋館。 そして、その洋館の横っ腹に鋭角的に突っ込んでいるように見えるコンクリートとガラスの長い建物が、安藤さんの作による新館への通路です。 安藤さんは、“鋭角的に突っ込む”のがお好きなようで、光の教会でも礼拝堂とホールは鋭角的にぶつかり合うようにして建っていました。 挑発的・野心的でありながら新しい調和を生むという離れ業を感じました。 ↑ 新館は、地中に小さい円形の美術館を埋め込むという斬新な構造です。 これが地下へ通じる通路。 明るいガラス張り。 ものすごく残響音が響き、いやでも地下の美術館へ向かう気持ちを高めてくれます。 しかし私の表情が暗いのはナゼ? それは帽子をなくしたことに気づいたからです! (詳しい顛末は旅をする帽子へ。) 地下室は地上からの採光が頼りのほの暗い円い部屋で、モネの睡蓮の絵が展示されています。 もわっと、湿度が高めに保たれていて、暗さと相まって眠気を催すような、胎内的な空間です。 ↑ 安藤建築巡礼の最後は、京都の木屋町、高瀬川沿いに建つテナントビルTime's。 ここは全貌のつかみにくい建物で、おもしろさを撮れないといって夫が悔しがっていました。 ぐるぐる巡ってもいつまでたっても迷子から抜けられないような構造、そして迷子気分が楽しくなる構造。 でも残念ながら、商業施設としては成功していないようです。 テナントの入っていない、空き部屋が(写真のように)ぽこぽこと。 さびしい。 せっかくのこんなにおもしろい建物なのに。 高瀬川の水位に限りなく近く床の高さを下げているつくりは本当におもしろい。 Time'sにはもっとがんばってほしい。 3つを駆け足で巡ってきた夫の感想・・・「安藤さんは、視野が広いんだよな。周囲の景観を壊さない配慮はすごい。新しいんだけど、その場所に沿いたいという気持ちが強く出ている建築なんだよな。まー個人の家だったら住みたくはないけどな。 今日はいいテーマだったぜ。おもしろかった。」 私はふたりで旅に出ると夫のツアコンなので、行き先の検討はすべて私任せ。 今回はご満足頂けたようです。
by apakaba
| 2008-03-10 23:25
| 国内旅行
|
Comments(9)
Commented
by
k国
at 2008-03-11 07:28
x
私の弟は淡路島にいます、そこで安藤さんの工事に携わっています、最初は屋上が蓮池のお寺、工事の元請は日本の大手
T工務店で弟の会社は下請けの実際工事をする会社の監督です。 安藤さんは仕事には厳しいけど現場の人間を尊重してくれると言ってました。 その後、淡路北部の安藤さんが計画した花公園夢舞台の数々の建物を建てました。 今度ユックリ見に行きたいです。
0
Commented
by
apakaba at 2008-03-11 17:35
淡路島は行きたいですね。あと、直島。
でもけっこう高いんですよねえ。 建築に無機質なイメージを持つと、建築物を読み解くことはできないと思っています。 建築ってすごくすごく熱いものだと思います。 今も建築をジャーナリスティックな視点で解いた本を読んでいますが、したいこと・めざしたいことと予算や立地などの現実的な条件とのせめぎ合いなど、興味は尽きないですねえ!
Commented
by
あづま川
at 2008-03-11 20:32
x
あー、やっぱりスクエアモードに凝ってますね。
人気は高いのに、これまで中判カメラを買わないと撮れなかった 真四角写真がコンデジで撮れるようになったのですからね。 でも50カットはすごいですね。研究熱心なのですね。 光の境界は、以前の記事を読んだときには「うーん・・・」という印象しかなかったのですが(コンクリ打ちっ放しの教会ってどうよ、人間味も尊厳さもないじゃん、みたいな)、今回の記事でちょっと興味がわいてきました。
Commented
by
あづま川
at 2008-03-11 20:34
x
光の境界→光の教会、でした・・・
うぉー! ボノも光の教会を見に行ったのですか!?
これは自分も見にいかなければ! 大阪在住ながら、実はいまだ行ったことがないのです。 教会のミサに一度参加したことがあるのですが、あの雰囲気って結構好きだったりします。 スクエア写真っていいですよね。 僕は中判カメラでスクエア写真を撮っています。 僕のホームページのスクエア写真のギャラリーを更新しましたので、よければどうぞ。 そういえば、大阪天保山にあるサントリーミュージアムも安藤建築でとてもすてきですよ。 余談ですが、昨年末に発売されたU2「ヨシュア・トゥリー」のリマスター盤は音質がよくなっていておすすめです。 1曲目から3曲目までの流れはサイコー! です。
Commented
by
apakaba at 2008-03-11 23:22
建築。
あづま川さん、誤変換はお互いドンマイでいきましょう。 私もよくこっそり教えてもらって汗汗で直してます。 スクエアは、今までの骨の髄までしみこんでいる「さて、縦で撮ろうか横で撮ろうか」を覆すみたいで、そこがたのしいらしい。 レトロな雰囲気づくりもしやすいし、視覚的に受ける印象が変わるところは、たしかに見比べてみるとナルホド!と感じました。 光の教会は、「人」がいて動いているという感じがとってもするんですね。 写真はやっぱりフォトジェニックを求めるから、ひとけのない感じを選んでしまうけど、ほんとはぜんぜん! 自己紹介していろんなお話聞いて。 ナゼかうどんが(関西っぽい)一杯200円でホールで売られていた。 牧師さんが本当に、人物なんですわ。 説教はふつうなのに……あとの見学者向けのお話がきっちりひとり漫才になってる。
Commented
by
apakaba at 2008-03-11 23:34
moronobuさん、U2お好きですか。ぐっひっひ。
ワタクシ実はおととしの来日公演に行ったんですよ! http://apakaba.exblog.jp/5089051/ もう、義務として読んでください!!!! ここから芋づる式にボノ関連記事も出てきます。 プロテスタントの日曜礼拝は、かなり忙しいですよ。 唄う唄う。歌好きじゃないと大変。 私は賛美歌唄うのは好きなのでがんがん唄ってしまいますが。 moronobuさんは写真お上手ですよねえ。 (私なんかに言われてもうれしくないでしょうねえ……) 拙ブログには、どこか、写真系のかたからのジャンプですか? しかしちょっとサイトが重いですねえ。 開くのにやや時間がかかります。 写真サイトは重さとの闘いですものね。 サントリーミュージアム、ふふふ、もちろん行きましたよ。 しかしややデカすぎて、海から眺めたいと思いました。 リマスター盤のご案内ありがとうございます! でも実はすでに持っていたりする!ぎゃはは。 1〜3曲目は、クルマならアクセルググッと踏んでしまいますよねえ!
Commented
by
aqua_blueY at 2008-03-16 00:56
こんにちは、はじめまして。
私も安藤建築大好きです。直島に行かれたことありますか?? 無ければ次は是非! 新しいホテルや地中美術館も素晴らしいけれど、ベネッセハウスは私のお気に入りで。 あそこに始めていったとき、インテリアデザイナーになろうと決めました。 光の教会綺麗ですね~。 行った事がまだ無いので、次はここに行って見たいです。
Commented
by
apakaba at 2008-03-17 07:57
aqua_blueYさん、いらっしゃいませ。
風邪引き&外出で、レス遅くなってすみません。 直島はもちろん、積年の憧れです。 でもお値段が……いつかは泊まりたいですねえ。 杉本博司氏設計の護王神社(ガラスの階段の)にも行ってみたいし。 写真展に行ったとき、海が見えるつくりで非常に興味を持ちました。 光の教会は装飾がぎりぎりまでそぎ落とされているので、逆に自由なインスピレーションを許される場ですね。ゼヒ! |
アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
ご案内
直島の旅行情報 blog links (エキサイトブログ以外) 彼の地への道すがら 三毛猫日記 ムスリムの女たちのインド 王様の耳そうじ 細道 紀行地図へと続く道。 「いい子」をやめたら人生がきらめく! greenmanbaliの日記 すきなものだけでいいです Avance(アヴァンセ)でいこうっ ライオンシティからリバーシティへ カテゴリ
全体 映画・ドラマ 歌舞伎・音楽・美術など 生活の話題 子供 国内旅行 旅行の話 ニュース・評論 文芸・文学・言語 健康・病気 食べたり飲んだり ファッション ベトナム2023.3 ソウル2022.11 思い出話 サイト・ブログについて 1990年の春休み 1990年の春休み.remix ver. 香港・マカオ2006 シンガポール2010 直島旅行2010 バリ&シンガポール2011.1 香港マカオ2011 香港2011夏 バリ&シンガポール2011.11 台北2012 家族旅行香港マカオ2012 ボルネオ 台湾2013 ヨルダン・シリア1998 イスラエル1999 エッセイ フランス インド2000 香港2013 スコットランド 大腸がん闘病 ソウル2023.1~3 シンガポール2023 台北旅行2023 未分類 最新のコメント
ライフログ
お気に入りブログ
Tatsuo Kotaki 草仏教ブログ ガタム ( ghatam ) 子供部屋 紅茶国C村の日々 梟通信~ホンの戯言 みんなのヒンディー語教室 勝手に僻地散歩 Atelier Kotaro SALTY SPEEDY シニアバイクマンⅡ FC2ブログに移転しました 旅行・映画ライター前原利... 塩と胡椒 いいあんべぇブログ 折原恵のニューヨーク写真... ブログパーツ
以前の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||