2005年 02月 28日
きのう、お隣が引っ越していった。 きのうは早朝から家族全員で一日中出かけていて、夜遅く帰宅したら、すでに空き家になっていた。 当欄05年1月11日分の日記「ふるさとは遠きにありて……」に書いたとおり、お隣の家は、3年前に前の住人が出て行ったあとを私の実家が買ったのである(ちなみに前の方が出て行ったときの話は、03年12月22日分「街は顔を変え、うつろう」に書いたことがある)。 梅雨入り前には、横浜から母と継父がやってくることになったので、3年間貸していたお隣のご家族に出て行っていただいたわけである。 もちろんいきなり追い出したのではなく、契約時に 「3年ごとの更新。最短で3年後に出ることになるかもしれない」 ということは承諾してもらっていたから、こちらとしてはなにも後ろめたいことはないのだが、やっぱりお子さんたちの転校や旦那さんの職場への通勤など考えると、なんだか気の毒かな……と思わずにいられなかった。 お隣のご夫婦は、家主が私の親だということを知っていたから、出て行かされる理由をすぐ察したことだろう。 悪いことをしているわけじゃないんだけど、やっぱり、ここ数ヶ月、なんとなくお隣の奥さんと会いにくくなっていた。 それはあちらも同じだったのかもしれない。 引っ越しが決まって以来、まるっきり顔を見なくなった。 もともとおつきあいがほとんどなかったのだけれど、「どうしたんだろう?倒れちゃったのかしら?」と疑うほどに、本当にぱったりと、奥さんを見かけなくなった。 年齢も私と同じくらいだし、おたがい子供3人ずつを同じ小学校に通わせていたのに、お隣の奥さんとは、なぜか最初から最後(に見かけた数ヶ月前)まで、うちとける機会がないままで別れた。 なんだかつかみどころがないひとだった。 一番近い場所では外壁どうしが1メートルくらいしか離れていないほどに密着して建っている家と家なので、そんな住環境では、とくに関心をはらっていなくとも、やはりお隣の生活のいろんな部分がわかってしまうものだ。 毎朝7時きっかりにトイレに入る人がいるとか、今日の晩ごはんは揚げ物らしいとかがわかってしまう。 こんな時間にまだ起きてるのかとか、知りたくなくても窓の灯りが目に飛び込んでくれば知れてしまう。 子供を怒る声も、聞こえてきてしまう。 自分のことを棚に上げていうけれど、お隣の奥さんが子供たちに対して怒っているとき、「あんな言い方しなくても、いいのになあ。」などと思っていた。 それもやはり、あちらも私のことを、同じように思っていただろう。 私が演劇部仕込みの大きな声で自分の子供たちをどやしつけている声は、そっくりあちらに聞こえていたにちがいない。 とにかく、じっさいには全然おつきあいがないのに、生活の深い一部分を知っているという、まことに奇妙な隣人関係が3年間つづいた。 2月末に引っ越すという話も、学校の友達を経由して人づてに聞いたのだ。 とうとう、挨拶もかわさないまま、ゆうべふっと消えるようにいなくなっていた。 勝手なもので、引っ越しの何日か前あたりにでも、最後の挨拶に来てくれてもいいのになあとちょっぴりだけ思った。 でも、そうやって離れていく人たちって、いるものだ。 今日になって、「もしも、お隣に、まったくちがうタイプの家族が入っていたら」と想像した。 3年前に入居してすぐに家族ぐるみのおつきあいになり、しょっちゅうお茶を飲みに訪問しあったりいっしょに出かけたり、ホームパーティーをやったりという、とことん仲よくなれる家族が入っていたら? ……そうしたら、たった3年で出て行ってもらうことを、ためらいなくできただろうか……? 浅い縁、深い縁、縁と縁がゆきあう。 春には横浜で両親が土地との縁を片づけて、隣の家に入ってくる。
by apakaba
| 2005-02-28 22:48
| 生活の話題
|
Comments(6)
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花岡じった
at 2005-03-01 08:01
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をぉ~、グッドタイミングなネタ。
うちもボチボチと引越しの準備中。週末は小物を新居に運んでいる。 当然今の住まいもその前の住まいもそのまた前の住まいも賃貸であるが それなりの思い出がある。最短で1年間しか住んでなかった場所もあったがそこが1番好きな場所(街)だったわ。 毎回の引越しはとてもユーツだったが新しい場所に移って「あれ買おう、こーしよう」と思うとそれはそれで楽しかったわ。 そんなもんすよ。 たぶんこれが最後の引越しとなるはずなんで今回は力入れて引っ越しますわ。(笑) うちも5月に母親が我家に来る。 まぁ、「同居」ってことですね。アハハ・・・ぁ、それこそユーツですわ。(苦笑)
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コメント一番乗りありがとうございます〜〜。じつはゆうべ1時半ごろにアップしたので、まだコメントなんてついてるわけないなと思っていたのさ。
私も、自分が引っ越しするのは面倒で面倒で。 なんつうか街との相性っていうのも、あるしね。 >毎回の引越しはとてもユーツだったが新しい場所に移って「あれ買お>う、こーしよう」と思うとそれはそれで楽しかったわ。 >そんなもんすよ。 ふふ、本当にそうですね。去ったお隣が楽しい新生活を送れるよう、祈ってます。 じったさんもお母さんを呼ぶんですかー。でもそうと決めたら、一日でも早いほうがいいんですよね……現実問題、年を取るほどに同居とか新環境で生活するのが難しくなってきて…… お互いガンバロー。
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safety-life at 2005-03-01 14:04
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apakaba at 2005-03-01 22:23
うーん、なんというか、以前の私ならそれなりに一生懸命に歩み寄ろうとしていたかもしれません。
でも、HPやブログを通じて自分の友だちもたくさんできているし、safety-lifeさんのように、会ったことがなくても毎日楽しく会話できる方もどんどんできますよね。 そうすると、多少ムリしてでもおつきあいしようというハングリーさがだんだんなくなってくるような気がしてます。我ながら。 そんな自分を振り返ると、私こそ現代人なのかなあと感じたりもしてます。
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safety-life at 2005-03-02 19:48
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三谷眞紀
at 2005-03-03 08:46
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>近所の人と喋ったりっていうのはいいものですよね。
そういうふうにおっしゃれるのは、きっととても健全な人間関係を築けてるからなのだろうなーと思います。 仕事上のつきあいが大変、とよく言われるけれど、仕事(賃金が発生)するんだからガマンは当然ですよね。 でも、金銭とか労使関係のない関係(ご近所・子供の親同士のつながりetc)って、ガマンがないので、かえってそのほうが「カンベンしてよ〜」なことになりやすいんですよね。 利害関係のない者同士でなかよくなれると、もう最高ですね。 |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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