2008年 10月 22日
ゆうべ、とある所で尾藤イサオ氏を見かけた。 彼の声が昔からとても好きだった。 “尾藤イサオ”と聞いてまず浮かぶのは、「あしたのジョー」のあの歌ではなくて、NHK朝の連続テレビ小説「おていちゃん」である。 あのころ、国民の半分は「おていちゃん」を見ていた。 女優の沢村貞子さんの半生を描いた超人気ドラマで、尾藤氏はヒロインのおていちゃんに恋をする青年役だった。 小倉一郎氏も出ていた。 ドラマ自体の細かいことはすべて忘れてしまったが、たったひとつ、小倉氏の言った衝撃的なセリフを覚えている。 純情可憐そのもののおていちゃんに向かって、とつぜん、 「君には娼婦の素質がある。僕がその素質を伸ばしてみせる。」 朝の国民的ドラマでそんなセリフが飛び出したことにも驚いたが、なによりも“娼婦”という言葉に激しく動揺した。 娼婦って……好きでもなんでもない男の人からお金をもらって、その代わりに体を触られたり、嫌なことでもイヤと言わずにされるがままになるという仕事だよね? それまで、たいした興味もなく惰性で見ていた番組を、この小倉氏のセリフの衝撃によって俄然注目し始めた。 尾藤氏はこの劇中でも役者だか歌手だか、エンターテインメント的な仕事をしている。 おていちゃんは荻島真一氏に惹かれているので、尾藤氏の気持ちを受け入れられない。 おていちゃんに案の定ふられた彼は、その日、ピエロのような厚塗りをして舞台に立ち、涙を滝のように流しながら、なんとあの『悲しき願い』を絶唱する。 ぐちゃぐちゃの涙でメイクがドロドロと流れ落ちる尾藤氏のアップ。 これほど壮絶な、男の失恋シーンをテレビで見たことがなかった。 胸を射抜かれた。 今にも、私もいっしょになって、涙がこみ上げるところだった。 尾藤イサオという歌手・役者の壮絶さも見せつけられ、私にとっては生まれて初めての、“テレビドラマでの忘れられない名演”になった。 きのう、その思い出の名演技をしてくれた尾藤氏を見かけて、すぐに「おていちゃん」でのシーンが浮かび、このことをブログに書こうと思って帰宅した。 それにしても、あのドラマを見て、“娼婦”という言葉に動揺し、『悲しき願い』に感情移入して泣きそうになっていたころの私って、何歳だったんだ? 調べてみたら、……満10歳……5年生に、なったばっかり……そんなあ〜! なんてませた感性のコドモだったのだろう! 当時の子供たちは、そんなもんだったのか? 朝から“娼婦”だの「だーれのせいでもありゃしないー。みんなおいらが悪いのか」だのとやっていた時代だから……
by apakaba
| 2008-10-22 17:34
| 思い出話
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Comments(6)
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kaneniwa at 2008-10-22 19:45
大塚博堂の「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」という
歌を尾藤イサオの歌声で聞いて、ダスティン・ホフマンって 誰だ?と思っていたらその直後に『卒業』という映画を 見ることになりました。 そして、その後、大塚博堂の世界を知ることになりました。 一時期、ブルーコメッツにも在籍していて、 その期間に、ビートルズ来日公演の前座の ステージ(ドリフターズもやったのは有名ですが) にも立っているのですね。 尾藤イサオのお父さんは松柳亭鶴枝(三代目)ですね。 BYマーヒー
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ogawa
at 2008-10-22 22:40
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尾藤イサオ、といえば「明日のジョー」は私の世代。
ロカビリーというブームで生き残ってアニマルズ「悲しき願い」や娼婦を歌った「朝日のあたる家」は彼の楽曲としては名演ですよね。 ひさしぶりYouTubeで聞いてみます。
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タカモト
at 2008-10-23 00:20
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ぴよ
at 2008-10-23 00:49
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だけどぉ~るるるるぅ~るぅるるぅ~るぅ~るるるぅ~
BY あしたのジョー あ、すまん。 尾藤イサオと言われると、コレしか思い浮かばない(苦笑) おていちゃん?ごめん。全く記憶にない。 小学校5年!? えーと。当時のぴよは「しょうふ」と聞いても、それがどういう意味なのかすら判らなかっただろうと。 「娼婦」も「売春」も「身売り」も「エロ」も何も知らなかった。 何しろ「子供の作り方(S●X)」の詳細を知って衝撃を受けたのが中学2年でしたから。 昔は本当にウブで真面目だったんですよ。ええ(苦笑)
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apakaba at 2008-10-26 19:57
尾藤イサオレス。
マーヒーさん、時代を感じるエピソードです。 大塚博堂さんは早く亡くなったんですね。 >尾藤イサオのお父さんは松柳亭鶴枝(三代目)ですね。 血筋がいいのですね。 彼の声やシャベリには江戸の粋が感じられてとてもいいですね。 ああいうのは真似しようとしてできるものではなくて、しみついてしみ出るものなんですね。 ogawaさん、アニマルズの元歌に力があるのは当然ですが、彼がカバーすると、そこに元歌にはなかったニッポンの湿っぽい情緒が加わって、なんともオリジナルな魅力を醸し出し始めるのです。 名曲に名カバー、楽曲も幸せだと思います。
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apakaba at 2008-10-26 20:01
尾藤イサオつづき。
モートーさん、(って。しばらく考えたぞ。マーヒーの真似をしてみたかったのね!) >ぢゃー、俺はその半分ではないな。 それ知らないし。(おていちゃん、鳩子の海なら見ていた記憶があるが) うーん、ごめん、なに言ってるんだかサパリとわかりません。 おていちゃんは、最大視聴率は50%だったんだって。 小倉一郎氏は、前に住んでいた街に住んでいて、しょっちゅう見かけました。 雰囲気はテレビとまったく同じでした。 ぴよさん、もちろん「あしたはー、どおっちーだー」は名曲ですよ!! >「娼婦」も「売春」も「身売り」も「エロ」も何も知らなかった。 ううむ。 では当時は私のほうがませていたということですね? 今はどっちがませているんでしょう!(ませている???) |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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